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紙芝居屋めるへんしあたあ主宰  信沢 淳一(安中市松井田町)



【略歴】大東文化大を卒業後、郵便局に34年間勤務。2009年に紙芝居屋めるへんしあたあを設立、紙芝居の出前公演を有料化した。演じ方や制作の指導もしている。


紙芝居屋



◎車に舞台積み出前公演



 みなさんが想像している紙芝居屋はどんなものでしょうか。9月、富岡市の保育園へ公演に行った時に先生から聞いた話です。子どもたちに「紙芝居屋さんが来るよ」と話すと、子どもたちは「自転車で来るの」と言ったそうです。私が子どものころは、自転車に紙芝居の舞台が付いた引き出し付きの箱に水飴あめなどを入れ、街角や公園にやって来て飴を売り、紙芝居はおまけで公演していたため「買わない子は後ろで見てな」と言われたものでした。

 私は趣味で25歳から紙芝居公演をしていました。2009年、郵便局を早期退職して「紙芝居屋」を始めるため軽四輪バンを買いました。依頼が来れば紙芝居舞台、照明蛍光灯、豆太鼓、舞台スタンド、手作り紙芝居、法被、衣装を車に積み、出前紙芝居に出かけます。今までのボランティアにあぐらをかき、紙芝居をしてやるんだというのではなく、お金をいただく以上、公演を見て満足していただき、厳しいご意見もいただく。また、どこでも出前公演できるよう車にETCを付け「紙芝居屋」の看板も付けました。手作り紙芝居公演をする以上、味のある絵が描きたいと、以前からやっていたはがき絵を生かし、出前はがき絵講師も始めました。「教えることは学ぶこと」です。

 油絵の学校にも通い始めました。そこでは、絵も基本が大切とあらためて思いました。県立土屋文明記念文学館の企画展「紙芝居展」で知り合った紙芝居師仲間と、魅力ある紙芝居絵とは、セリフの言い回しはどんなのが良いか、など熱の入った勉強会をしています。紙芝居作家の北川鎭さんに脚本依頼、多彩な人物像のアドバイスをいただき新作民話制作もしています。

 30年もボランティアをしていたので、いまだボランティアの依頼もたくさんあり、小学校の「読み聞かせ」などにも参加しています。紙芝居屋を仕事にしている人は全国でも数少ないですが、存在しています。仕事内容は紙芝居の公演、手作り紙芝居講座、演じ方講座などです。

 紙芝居は日本固有の文化です。ルーツは諸説あり、「のぞきからくり」「写し絵」「立ち絵」「鏡式立ち絵」などが発生。現在の紙芝居スタイルの原型になったのは1930(昭和5)年ごろと言われています。それから、雨後のたけのこのようにさまざまな形式の紙芝居や舞台の形が生まれ、変化してきました。

 街頭紙芝居から印刷紙芝居になると伝道紙芝居、国策紙芝居、教育紙芝居へと時代と共に比重が移りました。手作り紙芝居は、今も各地で作られ、新作紙芝居コンクールなども行われています。さらに日本の有志が海外で紙芝居技法・指導を行ったり、公演したりして日本文化の「KAMISIBAI」が世界に広まろうとしています。







(上毛新聞 2011年11月20日掲載)