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帝国データバンク太田支店長  西村 泰典(太田市飯田町)



【略歴】宮城県塩釜市生まれ、東京都大田区育ち。神奈川大卒業後、帝国データバンク入社。業務部や人事部、調査部、広島支店情報部長などを経て2011年3月から現職。


地域ブランド力の向上



◎「うまい物」情報発信を



 先日、大学時代の友人がこぞって太田のわが家に遊びに来てくれた。東京からどうやって来ればよいのか、友人に場所を説明するのだが、どうもしっくりこないらしい。

 当日が近くなるに従って、案の定、友人から「太田ってどこら辺だったっけ」とか「どうやって行くの」との再度の問い合わせが入ってきた。上毛かるたにあるように、群馬県は鶴が羽を広げた形になっているので、そのちょうど首のあたりだ、と言っても、みなピンとこないらしい。埼玉県の上で、近くに利根川と渡良瀬川が流れていると説明すると、「なんだ、今度は川の近くに住んでいるのか。台風は大丈夫だったのか?」などと心配される始末。気を取りなおして、日本で一番暑いと最近ニュースで取り上げられていた館林の近くだよ、と説明すると「そうか、暑いところなんだな」と妙に納得した声が返ってくる。質問の答えになっていないものの、テレビで聞いたことのある地名が出てきて、なんとなく少し分かったような気になったらしい。

 そういえば、みのもんた司会のテレビ番組を見ていたら、2010年度の地域ブランド力調査で群馬県が最下位の47位に沈んだ(1位は北海道)と放送していた。どうも東京都に隣接していない北関東の群馬・栃木・茨城の認知度は全国的にあまり高くないようだ。理由はいろいろありそうだが、ひとつには県名と県内ブランドが結びついていないのかもしれない。草津温泉は知っていても、それが群馬県だと知っている人は案外少ないようだ。

 結局、全員が浅草から東武鉄道の特急りょうもう号に乗って来ることになった。わざわざ遠方から来てくれた友人たちには、なるべく楽しんでいってもらいたいし、せっかく訪れてくれたからには、少しでも当地を知ってもらいたい。そのためには、やはり、あれこれ言葉で説明するよりも、実感として各人の胃袋を満足させる方が話が早いだろうと考えた。

 今回の家飲みでは、地物の新鮮野菜と腸詰屋の生ハム・ソーセージ、東毛酪農のチーズなど、地元産の食材を中心とした酒のさかなを並べ、お酒も太田、島岡酒造の淡緑を出してみた。また、締めには久路保山荘のひもかわうどんを供するなど、地元以外ではなかなか手に入りにくいものを中心に、当地ならではの経験ができるようなメニューでもてなすよう気をつけた。うまい酒とさかなに、帰るころには皆、当地に対する好感度も大幅アップ。地元のうまい物が地域ブランド力の向上に一役買うことは間違いないようだ。

 足下をよく見てみると、県内には素晴らしい素材がたくさんあることに気がつく。何をどう売り出していくのか、情報発信力が問われている。






(上毛新聞 2011年11月22日掲載)