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見城農園  見城 玲子(渋川市渋川)



【略歴】伊勢崎女子高、文化服装学院卒。1976年に結婚後、渋川市へ。主婦の傍ら25年ほど前から夫の彰さんと趣味で果樹栽培を始め、規模を拡大してきた。



西洋梨コミスにかける



◎「A級の味」栽培に成功



 食べることは大好きでした。夫と2人、趣味で始めた果樹栽培で、2人とも全くの素人でした。西洋梨が一番好きな果物であり、西洋梨を主にいろいろな果物を植えました。

 とりあえずラフランスなどを植えてみましたがうまいとは思いませんでした。群馬県には西洋梨を専門に栽培している農家はなかったため、長野県の著名な果樹研究家である故波多腰邦男先生のお宅へうかがい、教えを請いました。先生から「西洋梨は他の果物と違い、気候・風土に非常に左右される、国内で栽培されている主要品種全てを植えてみて、群馬県に一番あった西洋梨を探すように」とのご指導をいただき、その教え通りに20種類の西洋梨を植えてみました。

 植え付けから8年。実ったコミスを口にした時「これが西洋梨だ」と思いました。栽培品種をコミス一本に絞ることにして、関係する文献を探しました。しかし、「幻の西洋梨・品質最高」などと記載されているだけで、栽培方法を掲載した文献はなく、コミスの味について言及しているのは昭和天皇の料理人だった故秋山徳蔵氏の著書「味と舌」だけでした。

 それには「マンゴー、マンゴスチンなどというけれども、コミスの、あの品のある味には及ばない。皮を剥くと、ほんのりと淡黄がかった果肉が、いかにもしっとりとして、心を吸い寄せるようである。一片を口に入れる。とたんに、何ともいえない芳香とトロリとした舌ざわりと、上品な甘さが、口いっぱいに広がる。かす一つ残さず、アイスクリームのように溶けてしまう。実に素晴らしい逸品であった。四十年たった今でも、まだあの味が舌に残っている。以来、一度もコミスを見たことも、味わったこともない」と記されていました。

 極めて栽培が難しい品種とは思いましたが、全てをコミスにかけて20年、何とか栽培に成功したと思います。コミスはフランス原産ですが、フランスでは重さ270グラム程度です。当園では平均500グラム超で、最大の物は1キロを超えます。気候風土が合わなければ果物は大きくなりません。群馬県は果物の王・コミス栽培の最適地だったのです。「知名度最下位の群馬県」ですが「災害に日本一強く、農産物世界一の群馬県」があるはずです。他県や他国を圧倒する農産物を探してみてはいかがでしょう。 コミスは一昨年から、著名な料理店ガイドブックで一つ星、二つ星を取るフランス料理店や日本料理店との取引も始まりました。「コミス」のおかげで、著名なフランス料理店のシェフや日本料理店の大将との対話や会食の機会もできました。B級グルメが紙面をにぎわす昨今ではありますが、一流の食のプロに認められた群馬県の「A級グルメ・コミス」をご賞味あれ。






(上毛新聞 2011年11月27日掲載)