視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
NPO法人「生きる塾」理事長  渡辺 謙一郎(太田市新田早川町)



【略歴】太田市生まれ。樹徳高卒。小学生のころから障害のある人たちと一緒に過ごし、福祉への関心を高めた。日本メンタルヘルス協会認定カウンセラー、辺重社長。


ボランティア精神



◎被災地の復興に不可欠



 私は3月20日から被災地の宮城県石巻市へ復興支援活動に行っています。先日は被災地の復興支援協議会に加盟してきました。これから行うことは、仮設住宅の子どもたちとの放課後ふれあい。子どもたちが元気でいるかを簡単な運動、お勉強、遊びなどを通して確認していく活動です。ただのふれあいがとても大切なのです。

 初めて見た被災地はヘドロにまみれ、同じ日本の国とは思えない姿でした。ある方は松並木の松の木を3~4メートルよじ登って難を逃れ、その後もあちこちの避難所で奥様を探し回り、やっと会えたという話です。周りは人々のご遺体が並んでいたそうです。群馬県に住む私たちには想像もつかないことかもしれません。もし自分がそうなっていたらどうしているでしょう。

 当初、私は物資を届ける活動をさせていただきました。持っていた少々のお金でスーパーやドラッグストア、デパートで買い物をしたことを思い出します。初めて物資を被災者の方々に渡した時、相手の方の目が血走っていたことを覚えています。深々と頭を下げて感謝の気持ちを表してくれたお母さんのことも覚えています。

 月日は流れ、あれから9カ月。被災地の朝晩はとても寒い気候となりました。初めて被災地に泊まった時もとても寒かったことを思い出します。テントを張っていたのですが、寒くて眠れず、車の中で数日泊まりました。それでも寒くて体は痛くて…。しかし、そのころ被災者の方々はもっとつらかったでしょう。ペットボトルの水を3人で分け合って飲んでいたというお話も聞きました。

 現在の石巻市で起きていること、特に働くことについてお話ししたいと思います。まず、地元の方々はまだ震災で折れた心が立ち直らない、住居が定まらず気持ちが上向かない、なかなか働くことに没頭できない―そんな日々が続いているようです。そして、他県の方で復興支援の仕事をしようと考えている人、考えていない人。「地元の仕事だけでいい」という方。労働単価の問題。被災地の宿不足。多くのことをうまくマッチングするのが難しいようです。

 そこで問題なのは「自分のためより相手のため」という気持ちを持っているかではないでしょうか。ボランティアをやっていてつくづく思います。給料をもらっても精魂込めて働かない人と、無償であっても精魂込めてボランティア活動している人の差って何なのだろうと。このボランティア精神がなければ日本はいつになっても復興しないと思いますし、次の時代の先導者になるためにはこのボランティア精神が重要であると考えております。ぜひ一度ボランティアに参加してみてください。自分がどう変わっていくか。





(上毛新聞 2011年12月11日掲載)