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シンクトゥギャザー代表取締役  宗村 正弘(太田市新田早川町)



【略歴】足利市生まれ。富士重工業で車体設計を三十数年担当。退社後、2007年、工業製品開発を支援するシンクトゥギャザー設立。群馬大次世代EV研究会メンバー。


マイクロEV



◎一人乗りで充電も早く



 最近、EV(電気自動車)のニュースをあちらこちらから耳にするようになり、「クルマ社会も新しい時代に突入したなぁ」と感じられている方も多いと思います。

 EVの実用化が一歩前進したのはリチウムイオン電池というとても高性能な電池が開発されたことによります。しかし、この高性能なリチウムイオン電池をもってしてもなお、航続距離はガソリン車の半分以下でしかなく、航続距離で肩を並べるには今の数倍の容量の電池を積まなければなりません。そうなるとその分、居住スペースや荷物スペースが減り、重量・コスト・充電時間などが大幅に増えてしまい、とても実用に供せるクルマにはなりません。各家庭に来ている商用電源では200ボルトでも充電に丸一日かかってしまうかもしれません。

 実はここに現在のEVの限界があります。ガソリン車と肩を並べるにはさらに高性能で、軽量で、安価な電池の登場を待つしかないという手詰まり状態にあると言えます。

 それでは今後、EVの普及は難しいのでしょうか?

 いえいえ、そんなことはありません。

 ガソリン車と同じ性能を求める発想から新しい使い方、新しい小さなモビリティという発想に頭を切り替えれば良いのです。

 ひとつの答えとして近距離用途に的を絞った「マイクロEV」と称する一人乗りの電動原付ミニカーがあります。小さくて近距離用途ですから、搭載する電池容量は少なくて済み充電が早い、車両コストも安い、などのメリットがあります。

 群馬大学次世代EV研究会の調査では、軽自動車の乗車状況は90%が一人乗車という結果が出ており、一家に数台保有する状況において、通勤、通学、近隣の買い物等に使うクルマは一人乗りでも差し支えないと言えます。また、電動原付ミニカーのランニングコストの安さは驚くばかりです。1キロメートル移動するのにガソリン車は約10円、マイクロEVは約1円ですから。

 マイクロEVに搭載する電池の容量はニッサン・リーフの15分の1です。これで約30キロメートル走り、家庭の100ボルト電源にて約3時間で充電できます。その上、電池の重さは約15キログラム。人の手で容易に持ち上げられるので、電池交換も楽々です。もし、コンビニやガソリンスタンドで電池交換サービスを行ったなら、フル充電された電池と1~2分で交換できるので、充電時間中は走れないという問題が解消され、どこまでも走れるマイクロEVが実現します。

 この新しい発想のマイクロEVは人々のライフスタイルの革新と新しいビジネスを生み出す可能性を秘めていると思います。







(上毛新聞 2011年12月27日掲載)