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◎常に緊張し続けないで この度の大震災で亡くなられた方々に謹んでお悔やみ申し上げます。また、被災された全ての方々に、心からお見舞い申し上げます。 私の研究分野は「労働安全衛生」「産業・組織心理学」「人間工学」などで、人の心理や安全に関わることを研究しています。全国いろいろな場所の工場や船などで、調査や研究を行っています。出張先で時間があると、街角や駅、車内などで、時には歩きながら、人の行動を観察しています。 人の行動を観察していると、非常に無駄のない合理的な行動をしていると思えば、すごく無駄なことをしています。例えば、猛スピードで車が走っていっても、何度も信号に引っかかったり、エレベーターで扉を閉める時に、「閉」のボタンを何度も押したりすることなどです。 そこで、私と私のゼミナールの学生たちとで人間のいろいろな行動を観察しました。それらの結果を、イラストレーターの筒井南帆氏の協力を得てイラストを入れてコミックエッセー風にまとめ、「マンガでわかる 街角の行動観察」(創成社刊)を出版しました。 日常の行動を、紙とペン、時計などの日常の道具を使い、ごく簡単な方法で、日常で疑問に感じた行動の時間を計測したり、行動の頻度などを調べてみました。 例えば、バスが着いた時に、乗客は一斉に立ち上がり、並び始めます。バスを降りるときに一人当たりどれくらい時間がかかるのか、高崎駅の西口で4日間計測してみました。その結果、バスから降りる時間は一人当たり4秒ぐらいでした。バスを降りて、急いで走り去った人は1割もいませんでした。ほとんどが、バスを降りてからゆっくりと歩いていました。 飛行機でも着陸して旅客ターミナルに飛行機が停止すると同時に、乗客は一斉に立ち上がり、通路に並び始めます。それでも搭乗口が開くまで、何分か待たされます。東京国際空港の旅客ターミナルで半日、到着した乗客のゲートの通過時間を調べてみました。最初の人が降りてから、最後の人が降りるまで平均4分ぐらいです。また、急いで降りても、機内預けの手荷物受取所のところで荷物が出るのを待つことになります。 仕事をする上では真剣にやることは大切です。しかし、通勤や日常生活まで緊張を続けてはいないでしょうか。緊張を続けてストレスがたまると、心や身体に変調を来たすかもしれません。時と場合によって、よほど急ぐ時は別ですが、早く行動しなくてもよいのではないでしょうか。これからもこの紙面でいくつかご紹介していきます。 (上毛新聞 2011年12月28日掲載) |