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ゆいの家主宰  高石 知枝(高崎市菊地町)



【略歴】愛知県生まれ。愛知教育大卒。元小・中学校教員。2001年に退職。「ゆいの家」を拠点に、料理教室などの「食」にまつわる啓発活動を行っている。


広げたい「弁当の日」



◎親子の絆を取り戻そう



 親子の絆、取り戻しませんか。日本の親は、世界中のどの親よりも子どもにお金をかけていると言われていますが、親子関係は、どんどんギクシャクし、かつてはありえなかった親殺し、子殺しまで起こるようになりました。親は、少しでも子どものためにと一生懸命に働き、子どもは、親が大好きで認めてもらいたいと思っているのに親子関係がうまくいかない。お互い縁があって親子になったのにちっとも幸せになれない。どうしてなのとずっと思っていました。

 そんな中、竹下和男先生の提唱する「弁当の日」に出会いました。そしてすぐに、これだと思ったのです。「弁当の日」が親子の絆を取り戻す糸口になるのではと思ったのです。

 竹下先生の言う「弁当の日」は、親が作るのではなく、子どもたちが献立、買い出しから調理、後片付けまで一人でやってお弁当を作ることです。竹下先生は、そのように作られたお弁当を「弁当の日」と称して学校に持ってこさせました。それを定期的に行うことで、素敵な親子のエピソードがたくさん生まれました。竹下先生の講演会では、それらを写真とともに話してくれます。笑いあり涙ありで、感動的な話ばかりですが、この紙面上では紹介しきれないのが残念です。

 今の子どもたちの親世代がすでに、お手伝いよりも勉強を、と言われて育ってきました。そして、勉強していい学校に行くことが、将来高収入が得られ、それが幸せにつながると思わされて生きてきました。また、食べることで言えば、昔は家で作ったおにぎりやお茶なども買う時代で、何でもそろい至れり尽くせりです。昔のように自分で作るしかなかった時代とは違い、お金を出せば何でも買える時代になりました。

 しかし、親子の絆はお金で買えるものではありません。子どもたちは自分で作ってみるという体験を通して、多くのことを学んでいきます。また、子どもたちのそんな姿を見て親も気づくことがあると思います。料理を作るということは、自分の命の時間をその人のために使うことです。あなたが大切なんだよと無言で伝えることです。子どもは大人にほめてもらいたがっているのです。家族の一員として何かしたいのです。

 「食べる」ということは、誰もが毎日することで、命に直接つながり、生きることそのものです。「おいしいね」と言いながら一緒に食べることは、とげとげした乾ききった心もまあるくして、親子関係だけでなく、すべての人と人の関係を豊かにしてくれます。

 私は、そんな「弁当の日」を群馬にも広げたいと思い、竹下先生の講演会を1月15日に、高崎総合福祉センターで10時からします。

 「弁当の日」。学校だけでなく家庭や職場でも始めてみませんか。






(上毛新聞 2012年1月8日掲載)