視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
NPO法人みんなの未来研究所代表  須永 徹(太田市由良町)



【略歴】元ジャパンビバレッジ環境部長。定年退職後、2009年9月にNPO法人みんなの未来研究所設立。県環境アドバイザー、県地域づくり協議会委員。


被災者へコーヒー提供



◎心に働きかける活動を



 東日本大震災の発生から10カ月が過ぎました。何かしなければと思い、市内のNPO団体などに声をかけ、「太田パワー・ボランティアーズ絆」として、初めて宮城県石巻市へ炊き出しに行ったのが4月3日。ここで温かいコーヒーの提供をしたことが大変喜ばれ、その後「おいしいコーヒー飲ませ隊」の活動につながりました。

 月に2~3回、「おいしいコーヒー飲ませ隊」は、福島県内や宮城県内の避難所を巡回して、入れたてのコーヒーやココア、スープ、紅茶などを、夏場はかき氷のサービスをさせてもらいました。エプロン1枚を持参すれば誰でも参加できる活動ということで小学校2年生から70代まで延べ300人の皆さんが参加してくれています。ささやかながらも活動していると、少しずつですが町が復興している様子も感じられるようになりました。しかし、ボランティアとしての活動はこれからが本番ではないかと思っています。

 避難所が閉鎖され、ほとんどの皆さんが仮設住宅や民間アパートなどへ移りました。体育館などの避難所であれば、ある程度まとまった人数の方が生活されていましたが、仮設住宅となると集会所を中心に“店開き”をすることになります。集会所も市町村によって対応がまちまちで、専任の管理者が常駐しているところもあれば、普段は鍵がかかっていて利用しづらいところもあるようです。

 飲みに来てくれるのはお年寄りの方がほとんどですが、飲み物を飲みながらいろいろなお話を聞かせてもらったり、漬物の漬け方を教わったり、この時間がとても楽しいことは言うまでもありません。いわゆる茶飲み話をしながらの傾聴ボランティアに形が変わりつつあります。

 仮設住宅で個別の生活がスタートするということは、新たな問題の発生も心配されています。一人暮らしになってしまう人へのケアや、子どもたちに対しての家庭内暴力の発生懸念です。がれき撤去などのボランティアがひと段落してきた現在、人の心に働きかけるボランティア活動がますます必要とされてきているのではないでしょうか。

 最近の活動は、音楽を演奏する人たちやグループに同行し、飲み物を飲みながら演奏を楽しんでもらっています。誰でも知っている歌を中心に一緒に歌ってもらったりしますが、おしゃべりであれ歌であれ、声を出すことが精神的にはとてもよいことだという話を聞きました。今後は音楽や読み聞かせ、人形劇などをやる人たちとコラボレーションしながら、少しでも楽しい時間を提供できたらと思っています。ボランティア活動は決して難しいことではありません。少しでも時間的に余裕がある方は、思い切って出かけてみてはいかがでしょう。





(上毛新聞 2012年1月13日掲載)