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視点 オピニオン21
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見城農園  見城 玲子(渋川市渋川)



【略歴】伊勢崎女子高、文化服装学院卒。1976年に結婚後、渋川市へ。主婦の傍ら25年ほど前から夫の彰さんと趣味で果樹栽培を始め、規模を拡大してきた。


幻のリンゴ「群馬名月」



◎黄色ブームの火付け役



 当園で栽培している西洋梨「コミス」は、ヨーロッパやアメリカでは最高級品種と認知されているのですが、収穫量が他の西洋梨の10分の1程度と少なく、日本で専門に栽培している農家は1軒もありませんでした。したがって、肥料や土壌管理等は全て手探りで研究していくしかありませんでした。

 当園では技術チェックのために、桃とリンゴを栽培しています。桃とリンゴで試してみて、うまくいったら「コミス」にといった次第です。

 「赤いリンゴにくちびるよせて…」「私は真っ赤なりんごです…」。歌のせいではないでしょうが、消費者の皆さまには「リンゴは赤い」という思い込みがあったのではないかと思います。それを打ち破ったのが、群馬県農業技術センター北部分場が育成した「群馬名月」です。

 「群馬名月」は甘さの質が最高で、樹上で完熟させると、リンゴというよりは高級な洋菓子といった風味なのですが、黄色いリンゴということで、当初の栽培面積も少なく、県内の主力品種はやはりフジでした。

 近年、観光果樹園等で「群馬名月」を食べた皆さまから高い評価を受けるようになりましたが、当初の栽培面積が少なかったために、現在では「幻のリンゴ」となっています。

 「群馬名月」が黄色いリンゴブームの火付け役となり、以後、次々と黄色いリンゴが育成されています。

 「シナノゴールド」は、長野県の果樹試験場が育成した品種で、ゴールデン独特の風味があります。ゴールデンの果肉が軟らかいという欠点を克服したリンゴで、イタリアでも栽培が始まりました。

 「はるか」は、前岩手大学農学部教授・横田清氏が育成した品種です。リンゴの糖度は通常13度から14度くらいなのですが、当園での糖度は18度から21度と世界一甘いリンゴです。

 「もりのかがやき」は、国の果樹研究所が育成した品種です。最新品種で、まだ当園では結実しておりませんので味のコメントはできません。

 直売所や店頭で最新品種の黄色いリンゴを見かけましたら、ぜひご試食あれ。

 桃についても、「桃は白桃で果皮は赤い」という先入観があったと思いますが、黄色い桃の「黄金桃」は極上品質で間違いなく桃の王様です。その評価も高まっていて、次々と黄色い桃が育成されています。黄色い桃と白桃は系統が違うのではと思われている消費者の方が多いと思われますが、黄色い桃も白桃も同じ系統の桃です。白桃の中にも4分の1黄桃の遺伝子があり、白桃と白桃を交配しても黄桃ができます。

 桃の季節になりましたら、ぜひ黄色い桃もお買い求めください。




(上毛新聞 2012年1月23日掲載)