,

視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
神流町観光インストラクター  細谷 啓三(伊勢崎市韮塚町)



【略歴】沼田市出身。神奈川県神奈川工業高、京都市立芸術大学校美術学部卒。大洋グループなどでテレビ制作関連の業務に携わり、2009年8月から現職。


独自の観光づくり



◎高齢者の経験生かそう



 神流町は激しい過疎化・高齢化の波に見舞われ、かつて1万人以上いた人口も大きく減った。2003(平成15)年4月に万場町と中里村が合併して「神流町」が生まれ、8年9カ月になる。年間で平均すると100人ほど減少している。地域としてIターン、Uターンなど人口を増やす取り組みをしているが、なかなか思ったようにいかないのが現状だ。このようなことを踏まえ、悲観的な声も耳にすることがある。町の将来に対して光が見えない等の内容である。

 しかし、私はそうは思わない。若者が多ければ町の将来が明るいかと言えば、一概にそうとも限らないのではないか。現在、神流町の高齢者比率は51・7%(今年1月1日現在)。2人に1人以上が高齢者ということになる。視点を変えると、明るい材料が見えてくる。物事に対して若者よりも多く経験を重ね、知識をいっぱい持っている人が多いということだ。その経験や知識は、郷土料理や工芸品、町の歴史や民話などいろいろな分野に広がる。このような方々の経験をヒントに、現代の人々に評価をいただけるような商品に仕上げていく。一長一短はあるが、風土に合ったオリジナルの素晴らしいものができそうな予感がする。

 だから、高齢者比率が高いことは、目線を変えると経験者、地域の財産がいっぱい埋蔵されているということにもなる。将来に向けて大きな可能性があるといえよう。

 観光という点から考えても、自然が豊かで関東で一番の清流「神流川」も流れている、そこに地域色豊かなおいしい料理があり、お土産として求めたくなるような食や日用工芸品があってはじめて観光全体が活性化すると思う。山里の知恵と高齢者の方々のパワーをいただき、地域の独創性を生かした観光の町「神流」を創造したい。

 昨年の12月、TBSラジオ「安住紳一郎の日曜天国」という番組の公開生放送が行われた。後日談ではあるが、制作スタッフから「田舎の町だから会場設営とか、きっと段取りは良くないだろうと思いながら当日を迎えたが、とんでもないことで、プロのイベントスタッフよりも手際がよくて驚いた」と、おほめの言葉をいただいた。

 それもそのはず。神流町には大きいイベントだけで年に3回ある。春の「鯉のぼり祭り」、夏の「神流の涼」、秋の「マウンテンラン&ウォーク」。町の方々にボランティアで協力をいただいている。特に鯉のぼり祭りは30年の蓄積されたキャリアがある。それが今回、生かされたのだなと思う。このような頼もしい町の方々にこれからも知恵や力をお借りして、他にない神流町独自の観光や物産をつくっていきたい。





(上毛新聞 2012年1月31日掲載)