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視点 オピニオン21
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高崎健康福祉大教授  入沢 孝一(前橋市関根町)



【略歴】渋川高、中京大体育学部卒。嬬恋西中、嬬恋高をスケートの強豪校に育てた。日本代表コーチ・監督も務め、黒岩彰、黒岩敏幸を五輪でメダリストへと導いた。


競技力向上対策



◎予算生かすマンパワー



 競技成績が上がらない理由を考えると、意外と簡単なことに集約されてしまうことに気がつきます。例えば素晴らしい練習環境が整備されていても、練習しない、練習内容が悪い、計画・実践はあるが次につなげるための評価をしていない、勝つためのモデルを知らない、良い計画を作っても予算がないため実行できない、効果が疑わしい計画に予算をつけてしまった等々です。このようなことは競技スポーツで勝利を目指している指導者は誰でも考えていることですが、いざ実践するとなるとなかなか難しいことです。毎回のオリンピックや世界選手権で好成績を上げ、スポーツ先進国と言われている国の状況を紹介したいと思います。

 どの国にも共通する考え方は、計画を厳しく査定して予算を付ける、結果について正しい評価をしている―の2点が挙げられます。つまり、結果は事前の準備段階で決まる、結果を正しく評価することが次の計画につながるという考え方です。そこで問題となるのは、計画を作る人は誰なのか、作った計画を査定し予算を付ける人は誰なのか、さらに、予算を使い成果を上げるための実践をする人は誰なのかということが重要になってきます。 ここでは、計画の査定について詳しく紹介したいと思います。多くの場合、査定を行うポジションは国際レベルの指導実績を残し、競技力向上のためのマネジメント業務を担当し実績を上げた人物がその役割を担っています。査定は第一に計画の内容、第二に医科学サポート体制や練習環境の整備状況、第三に担当する指導者の力量の3点を基準としています。この中で注目すべきは、選手指導の中心的役割を果たすのは指導者ですが、マネジメントを担当する人の力量を非常に重視していることです。つまり、強化予算を効率的に活用し成果を上げるためには、全体の調整をするマネジメント(現状把握・目標設定・計画作成・実践・実践のモニタリング・競技結果の分析と評価)担当者の存在が非常に重要であるということです。このように競技力向上の成否は、強化予算の査定が効果的に実施され、実践段階でのチェック(モニタリング)が計画的に行われているかにかかっており、それを運用するのは専門分野のマンパワーであることが分かります。

 私は現在、高崎健康福祉大学でスケート部の活動を行うために、多くの予算を選手強化に使わせてもらっています。貴重な強化費用を生かすための計画、実践、評価の競技力向上マネジメントの重要性、そして多くの関係者から理解され応援してもらえる実践の必要性を日々感じるとともに、スケートを通じて素晴らしい人間性を持った選手に育ちつつある学生に夢を感じながら充実した毎日を送っています。





(上毛新聞 2012年2月2日掲載)