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視点 オピニオン21
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国立赤城青少年交流の家所長  桜井 義維英(前橋市元総社町)



【略歴】川崎市出身。日体大卒。英国で冒険教育を学ぶ。1983年にNPO法人・国際自然大学校(本部・東京都)を設立。2011年4月から民間出身者として現職。


想像する力



◎五感使った経験重ねる



 『青い小人』

 机にひろげた地図の山道を/青えんぴつでたどっていくと/はるかな 空の下の/ほんとの その山道の/ちょうどそこにいま いるウサギが/目を ぱちくり/食べかけのタンポポほっといて―あれ いま/ぼくの耳を/ちょこちょこして行ったのは/青い小人!?また/その先々の道ぞいで/木を切っている炭やきのおじさんも/ひるねのヘビも/水あび中の小鳥たちも/つぎつぎに/目を/しろくろ/―あれれ いま・頭のへんを/青い小人が/こちょこちょして逃げたぞ!?ははは やっほ!/ぼくの手の青い小人よ/進め進め/今度の夏休みに みんなで行く/目茶(めちゃ)目茶たんけんコースを 進め進め

 まどみちお詩集『人間のうた』(まどみちお著 銀河社刊)

 この想像力、素敵ですね。ウサギが食べるところを知っているか。タンポポを知っているか。それを頭の中で結合させて、その風景を想像するのです。そんな想像力があるから、夏休みの目茶目茶たんけんが楽しみでワクワクしてくるのでしょう。

 この想像する力…誰でも持っているものではないのです。しかし誰にでも持つことができるものだと思うのです。

 どういうことかというと、想像することができるのは、その人の経験の中からでしかないのです。経験を記憶して、それをいろいろな形でつなぎ合わせる。その、つなぎ合わせるための技術が、勉強です。算数や国語の授業でつなげ合わせる力を身につけるのだと思うのです。経験とつなぎ合わせる力の掛け算が、想像する力だと思うのです。

 学校は勉強で、ものを覚えるのではなくて、いろいろなことをつなぎあわせて、工夫して答え…すなわち想像…を導き出す力を身につけてもらいます。ご家庭や私たちは、この経験を子どもたちにたくさんしてもらうために頑張らなくてはいけないと思うのです。

 そして、その経験は、記憶として頭の中に蓄積されています。記憶になるには…五感をできるだけ多く使った方が強く記憶に残ると思うのです。

 例えば、

・餃子を写真で見るだけ

・匂いと形を見る

・匂って形を見て味わう

・作って、匂って形を見て味わう

 どれが一番記憶に残るかは歴然ですよね。このように記憶は、体すべての感覚で感じる経験を繰り返す必要があるのです。それも、多種多様な…この多種多様というのは自然の中が一番いいのです。なぜなら、ひと時として同じことがないのが自然だからです。





(上毛新聞 2012年2月4日掲載)