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視点 オピニオン21
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NPO法人「生きる塾」理事長  渡辺 謙一郎(太田市新田早川町)



【略歴】太田市生まれ。樹徳高卒。小学生のころから障害のある人たちと一緒に過ごし、福祉への関心を高めた。日本メンタルヘルス協会認定カウンセラー、辺重社長。


被災地で感じたこと



◎支え合い災害に備えを



 きょうもまた被災地の宮城県石巻市から帰ってきました。小指の手のひらの内側にちょっと傷をつくりました。津波で壊れた家を撤去する際につくった傷です。何かを持つたびにチクリと痛みます。チクリとした時、この家の人のことを思い出します。当然ですが誰もこんなことが起きるなんて思ってもいませんでした。でも、そこに住んでいた人はいなくなってしまったのです。悲しみを抱え、残された家族は生きていくのです。立ち直れない人、明るく振る舞う人、負けてたまるかという人。さまざまですが、支援者と地元の方で力を合わせて生きています。これからも国民全員で「力を合わせて」生きていくことが必要であり、同時にそれはとても幸せなことなのだと思います。

 先日、1軒の家で上棟のお祝いがありました。石巻ではさい銭をまく風習のようで、多くの人でにぎわっていました。群馬では最近、上棟祝いをほとんど見かけないので、とても心和む風景でした。昔の日本の良さを感じました。人柄も地方でさまざまです。赤ちょうちんで飲んだ時、カウンターの知らない人と意気投合しました。たまたまかもしれませんが、石巻には明るい人が多いようです。こういう性格の人たちだからこそ地域のつながりがあり、それで震災にも耐えられたのかもしれません。

 今、石巻で公園づくりをお手伝いしています。子どもたちが少し冒険できるような公園(火おこし、木登り、昆虫採集、キャンプ)が注目されているようで、この公園もそんな方向を考えています。ボランティアはまだまだやることがあります。子どもたちの心のケアもその一つ。といっても子どもたちと遊ぶだけで良いのです。遊びはどんな内容にしようか検討しています。この記事が出ているころには内容も決まり実行していると思います。お手伝いいただける方はNPO法人「生きる塾」までご連絡ください。

 日本は地震の多い国と言われていますので、いつ地震が起きても対応できるように準備しておかなければいけません。先ほどの公園などで子どもたちに自力で避難できる力を養ってもらうのもいいでしょう。社会福祉の会や災害ボランティアのネットワークもしっかり整え、備えなければならないと思います。そのことに関しても今年は動きたいと思います。

 一つの市町村だけで行うのではなく、両毛、西毛、中毛等のように、もう少し大きなくくりにして、協力し助け合っていくことが大切だということに、今回の震災で気づいたのではないでしょうか。みんなで住むところはみんなの力でつくっていかなければなりません。議員や行政頼みではいけないと思うのです。ぜひみんなでつくっていきましょう。





(上毛新聞 2012年2月5日掲載)