,

視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
読み聞かせボランティア  片亀 歳晴(玉村町樋越)



【略歴】太田高卒。伊勢崎市職員を経てアート記録設立。解散後、ボランティアに専念。小さな親切運動本部特任推進委員、紙芝居文化推進協議会会員、玉村町選管委員。


現代ボランティア考(2)



◎命の重さや尊さ伝える



 地域に関わるということは、すなわち人を知るということでもあります。そうした中で、私は心に響く多くの場面に遭遇してきました。

 幸い、私には自分を支えてくれる多くの人がいます。それは地域の人たちであり、先輩や友人、仕事・趣味・ボランティア活動を通じて知り合った人たちですが、それ以外に、ふと道端で見かけた人にも時に感動し、時に心癒やされることが少なくありません。

 私は毎日、1万歩を目標にウオーキングをしています。その道すがら、ごみを拾う人、公園で花の手入れをする人、川岸で植栽をする人、中には車にひかれた犬や猫を動物病院へ連れて行くという人に出会ったこともあります。

 このうちのお三方は「小さな親切」運動本部から、全国の「親切さん」ということで表彰されています。これらの行為は個人、団体を問わず、まさに素晴らしいボランティアとしての活動です。同時に、この人たちは地域に対し、また動植物に対し、限りない愛情を注いでいるがゆえに、なし得る善行だと思います。

 私はこうした姿を目にしたとき、迷わず「ご苦労さまです」と声を掛けることにしています。この一声から会話が生まれ、その人たちの生き方に触れることができるばかりか、自分自身の励みにつながり、奉仕の精神を奮い起こす原動力になると思うからです。その一声こそがまさにボランティアの第一歩ではないでしょうか。『一声を掛けて広がる奉仕の輪』。私はこのことを心に刻み、今後もこの声掛けを心がけていくつもりです。多くの人にもぜひ実践していただきたいことだと思っています。

 私がおうかがいしている、あるグループホームで体験したことを紹介したいと思います。それは、恒例である私の紙芝居公演が終わった直後のことでした。ホーム長が私のもとに来て涙ながらに語ったことに「○○さんが、たった今、息を引き取りました」

 「人間、意識はなくなっても、聞くという機能は最期まで残るから、○○さんが好きだった紙芝居を聞かせてあげましょう」という主治医の言葉に呼応し、ホーム長は早速、その人のベッドを部屋から私の声の届く廊下まで移動したとのことです。

 主治医にしてもホーム長にしても、何という人間味あふれる慈愛に満ちた対応をなされたことでしょう。職業とはいえ、これこそがボランティア精神の最たるものであると私は感服の念を禁じ得ませんでした。

 このような厳粛にして劇的な状況から得た貴重な経験を無駄にしないよう、今後、私はボランティアとして読み聞かせの場に生かさなければならないと思っています。それは言うまでもなく命の重さ、尊さを伝えるということです。





(上毛新聞 2012年2月12日掲載)