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視点 オピニオン21
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群馬工業高等専門学校准教授  三上 卓(前橋市南町)



【略歴】大阪府吹田市出身。徳島大大学院修了。博士(工学)。専門は地震工学、橋梁(りょう)工学。東日本大震災津波避難合同調査団に参加、岩手県山田町・宮城県石巻市を調査した。


被災地への支援



◎いまできることは何か



 東日本大震災が発生してから間もなく1年がたとうとしている。未曽有の大震災が故に、日本全体で被災地への支援の声が数多く上がった。

 テレビや新聞では連日、報道機関を通じた日本赤十字社への義援金の募集が告知され、国民の多くが「自分にできることは義援金を送ることぐらい」という思いで、義援金を送ったのではないだろうか。6月になり、義援金が3割程度しか被災者には送られていないというショックな報道があったのを覚えている。多くの義援金をどのように配分するのか。避難所や仮設住宅にいる方々にどうやって配分するのかといったシステム上の問題があるにせよ、義援金を寄付した人は、すぐに届くと思って寄付を選択したのではないだろうか。

 日本赤十字社への義援金は1月20日現在で、約3458億円とウェブサイトで報告されている。いったい何に使われたのだろうか。本当に被災者に届いたのだろうか、という疑問が生じ、サイトを閲覧したが、募金総額の9割に当たる3160億円が都道県へ配分され、第1次分こそ1戸当たりの金額はあるものの、第2次分はルールに基づき概ね配分されたと書かれているだけである。

 一方で、多くの目的別寄付が募集されていたのを目にした。その一つに「復興ファンド」がある。ある復興ファンドは、被災した水産加工業者が会社を再建するために1口1万円といった金額で、国民から直接支援を受けるというものである。ファンドによって異なるが、随時、会社の復興状況がサイトで報告され、復興後、その会社の海産物などが送付されるといったものが紹介されていた。

 人的支援では、「ボランティア活動」にも注目が集まった。震災後連日、首都圏を中心に大型バスが被災地に入り、がれき処理や家屋に流れ込んだ泥かきをしている映像が報道番組で数多く放映された。しかし、食事や宿泊場所を各自で確保するということもあり、被災地はもともと簡易な宿泊施設が少ない上に、数多く被害を受け、個人ではなかなか確保できずに、ボランティア活動に行くことをためらったという話をよく耳にした。

 現在では、被災地の報道が下火になるとともに、ボランティアの人数も激減し、被災地での支援がままならないと聞いている。一方で、従来、シルバー人材等が手掛けていた仕事にまでボランティアを活用する動きがあり、被災者の仕事再開にブレーキをかけている実情を仮設住宅でのヒアリング調査で耳にし、驚かされた。

 群馬高専では、3月5日~6日に希望学生80人を引率し、宮城県石巻市にボランティア活動に行く計画を立ち上げた。本校の学生は被災地で何を感じ、何を得てくれるだろう。






(上毛新聞 2012年2月14日掲載)