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シンクトゥギャザー代表取締役  宗村 正弘(太田市新田早川町)



【略歴】足利市生まれ。富士重工業で車体設計を三十数年担当。退社後、2007年、工業製品開発を支援するシンクトゥギャザー設立。群馬大次世代EV研究会メンバー。


マイクロEVの可能性



◎新規格の法制化へ動き



 前回、マイクロEV(超小型電気自動車)という新しい発想の交通手段の話をしました。マイクロEVの良いところばかりを述べましたが、現実的に考えると良いところばかりではありません。今回はその辺のお話をしましょう。

 マイクロEVは現在の道路交通関係の法律では「第1種原動機付4輪自転車」というカテゴリーに入ります。つまり、4輪の「原チャリ」ということになります。従って乗員は1人、積載できる荷物は30キログラム以下です。

 2輪の「原チャリ」と違うところは、最高速度が時速60キロメートルまで認められ車線の中央を走れること、そのため運転免許証は普通免許が必要、転倒しないのでヘルメット着用は不要、自動車税が年2500円であることなどです。

 前回、軽自動車の使用実態として90%は1人で乗っていると述べましたが、「1人で乗っている」と「1人しか乗れない」とでは大きな違いがあります。他の人を乗せられない場面が10%もあると考えると購入をためらってしまうでしょう。

 また、大きなクルマと混在して走りますので、非力ゆえに交通の流れに乗れなかったり、不安定な走りをしていたのでは周りの運転者の迷惑ですし、運転する自分もストレスを感じてしまいます。大きなクルマにぶつけられた時の安全性もとても心配です。

 こんなマイクロEVがどうして普及する可能性があるのかというと、実は超小型電気自動車が持つ環境対応性、超経済性、産業振興性などのポジティブな面に国土交通省が着目。「超小型モビリティ」という新しい車両規格を研究していて法制化される動きがあるからです。

 この研究の一環として、これまで全国各地でさまざまな実証実験が行われています。群馬県では今年度、桐生市と館林市で昨年11月から今年1月までの3カ月間、弊社のマイクロEV4台を使って実証実験を行いました。実際に使っていただいたモニターさんからご意見をうかがっています。

 東毛地区ではマイクロEVが街の中を走っている姿を見かけた方も多いのではないでしょうか。「超小型モビリティ」新規格について筆者が聞き及ぶところでは、2人乗りであること、それに見合うモーター出力、車両の大きさ、安全性など車両に関する事項のほか、道路交通形態や既存の社会環境に及ぼす影響なども含めたさまざまな研究・検討を行っているようです。この新規格により、前述のネガティブな面がかなり改善されると考えられ、施行されればそれに合わせた車両が続々と登場するでしょう。小さなEVですが、自動車業界ほか各方面に及ぼす影響は計り知れません。




(上毛新聞 2012年2月21日掲載)