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視点 オピニオン21
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アドベンチャーレース・マネジメント  竹内 靖恵(みなかみ町鹿野沢)



【略歴】愛知県出身。1997年のアドベンチャーレース(AR)で日本チームの通訳を務めたことが縁でプロレーサー・田中正人と結婚。以降、ARの普及活動に従事。


誇り持てる仕事



◎信じた道へ踏み出して



 就職難と言われる時代に入って久しい。やっと企業に入社できても、希望の部署ではなかったり、リストラやパワハラもあったり。また、せっかく入社しても夢と現実のギャップに悩み、辞めていく若者も少なくない。しかし今の社会を嘆くだけでは何も変わらない。ならばその社会を自分たちの手で変えればいい。自分の得意な分野で社会を切り開いてみてはどうだろうか。不安はあるだろう。しかし、人は倒れる度に強くなって起き上がるものだし、必ず助けてくれる人が現れる。

 「人間が学ぶべきものがAR(アドベンチャーレース)にはある」。AR国内第一人者の田中正人がARと関わり今年で18年、私は15年になる。私は田中のマネジメントを職にしたが、それまでマネジメント経験ゼロ。アウトドアスポーツもしない。そんな人間がマネジメントをできるのだろうか? 最初は不安だらけだった。経験も能力もない自分だが、それでも何かできる事があるはず。それを模索するのが私の仕事の始まりだった。

 まずは知名度のないARを一人でも多くの人に知ってもらうため、当時放送されたARの番組をビデオテープに収めて持ち歩いた。ダビングを繰り返し壊したデッキは数台。「聞いたことがない」と門前払いが数社。来る日も来る日も理解者を求め歩き回った。

 やがて少しずつ話を聞いてくれる人たちが出てきた。そして一緒にレースに出たいと言う仲間や、ARを取り上げてくれるマスコミも現れ始めた。今では「元気をもらった」「大切なことを学んだ」と、多くの方から応援をしていただけるようになった。

 しかし、AR人口が爆発的に増えるわけでもなく、簡単にはいかない。収入が止まってしまった時もあった。「就職しようか」と考えたこともあった。だが、「僕らの目的は儲もうけることじゃない」と田中に言われ、自分が目先の利益だけを追っていたことに気が付いた。「ARには人間が学ぶべきものが含まれている。それを今の日本人に伝えるべきだ。僕たちがやっているのは儲かることではないけれど、日本を元気にするための要素をつくり上げているんだ」。田中のブレない信念によって私のすべき仕事を再認識した。

 私たちの選んだ道は軌跡もなければ、平坦でもない。目立てば人からとやかく言われる。しかし、人が何を言ったとしても、自分が正しいと思ったら突き進む。どんな形にせよ人様のためになり、それに誇りが持てる。仕事とはそうあるべきではないだろうか。

 今、就職先を求めて将来を憂えている若者たちよ、自分に自信を持って、信じた道に一歩踏み出してみたらどうだろう。踏み出せばきっと次の一歩の置き所が見つかるはず。






(上毛新聞 2012年2月24日掲載)