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視点 オピニオン21
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NPO法人グリーンハート理事長  横堀 充則(伊勢崎市太田町)



【略歴】伊勢崎市生まれ。明和県央高卒。飲食店経営。2009年、市内の若者の活動拠点としてNPO法人を設立。波志江沼イルミネーション実行委員。


父親の後ろ姿に学ぶ



◎何事も諦めず取り組む



 私は伊勢崎市の波志江町に生まれ育ちました。勉強もスポーツも得意ではなく、周りの友人の特技がうらやましく思えていました。毎日遊びに夢中な小学生のころ、心の片隅ではどこかふがいない気持ちがありました。

 私が小学6年に上がると、父親が「家族の家を建てる」と言い出しました。父親の職業は造園業。「無理だろう」と思ったことを覚えています。もちろん、周囲からは反対されましたが、頑固な父親は反対を押し切り、材料を買いそろえ家を建て始めてしまったのです。

 建築の経験などなく、ただ手先が器用なだけの父。毎日仕事から帰ると夜遅くまで作業をしていました。楽しそうに作業をコツコツ進める父親が、私は不思議でした。建築業者に頼んでしまえば簡単なのに、手作りにこだわる父。ほぼ休まず作業を進め、約2年半かけて完成した手作りの家は素晴らしいものでした。父の懸命な姿勢と「決して諦めない後ろ姿」に、“人生で一番大切なもの”を教わった気がしました。

 私には特技や優れた能力はないかもしれない。しかし、父のように「何事も諦めない」ことなら自分にもできるのではないか? 私の気持ちは行動に表れ、中学、高校と学校内で一番厳しいといわれる部活動をあえて選び、挑戦しました。大きな結果は残せなかったものの、いつの日か私には目標ができていました。「自分が心を動かされたように、人に感動を与える父親のような人間になりたい」。これが私の人生の目標になりました。

 私はNPO法人を運営しこの1年間さまざまな人たちと出会い、ボランティア活動をしてきました。収益基盤を持たないNPO法人が大半で、お金がなければどんなに大切なボランティアのアイデアも実行に移せず、活動の停滞は避けられないのが現状です。しかし、試行錯誤し、仲間と協力し、一つ一つ問題を解決して実行していく。そんな姿勢はどこか、幼いころに見た「父親の姿」と重なるものがあります。

 ボランティア業界は決して安定しているとは言えませんが、基盤が不十分だからこそ得られるものがあると思います。諸問題の解決が私たちNPO法人のミッションですが、結果ではなく、取り組む姿勢こそが一番大切だと気付きました。社会保障など行政・政治を改革する前に、私たち“民”が変わっていくことが、本当の意味での日本再生につながると思います。

 まずは小さなコミュニティーから何か行動を起こすことをお勧めします。家族や友人同士、恋人と月に1回の空き缶拾いでも始めてみたらいかがでしょうか。良いことをしたら恥ずかしがらずに、人から人へ伝えていきましょう。諦めない気持ちが、あなた自身の“今”を変えると思います。






(上毛新聞 2012年2月29日掲載)