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視点 オピニオン21
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ゆいの家主宰  高石 知枝(高崎市菊地町)



【略歴】愛知県生まれ。愛知教育大卒。元小・中学校教員。2001年に退職。「ゆいの家」を拠点に、料理教室などの「食」にまつわる啓発活動を行っている。


「弁当の日」の効果



◎良好な家族関係つくる



 「親子の絆、取り戻しませんか」―そんな出だしで前回の視点を書かせてもらいました。その時紹介しました竹下和男先生の「弁当の日」の講演会も終わり、参加された方の声をご紹介したいと思います。

 40代の女性は「あっという間の2時間。講演会を聴く前と後では意識が変わりました。私も息子も料理には興味を持っていますが、料理ができるまで教えていないので教えたいと思いました」。30代の女性は「2歳の娘が私が台所に立つと『何しているの』としきりにのぞき込んできます。いつ包丁を持たせようか、いつ一緒に作り始めようかと、子育てが楽しくなってきました」。別の40代女性は「中2の娘が通う中学校ではすでにお弁当の日を実施しています。こんな深い意味があるとは思っていませんでした。お手伝いしたがる娘をつい邪魔にしていることを反省しました」

 このように多くの方の感想をいただきました。家に帰ったら実践しますという声もありました。子どもたちが献立、買い出しから調理、後片付けまで一人でする「弁当の日」は、ただの弁当作りではなく、ある方も「生きることそのものなのですね」と言われていました。

 竹下先生が10年前に始めた第1期生の子どもたちが成人して、70%以上が自分で料理を作っているようです。下宿をしている子は、友だちがそれを食べに集まり「何でそんなに料理が作れるんだ」と不思議がられるそうです。友だちはみんな本当に料理が作れないとのことで、2期生になるとさらに確実に成果が出ています。

 また、親子関係が良くなったり子どもが頑張りを見せるようになり、中には「子どもが『弁当の日』をするようになって、フライパン料理しかしなかったんですが、煮物も作るようになりました」と、お母さんたちもその効果を認めています。「弁当の日」は最初から効果を狙ってやるものではないと思いますが、結果として本当にやって良かったと思えることがどんどん出てきます。

 そんな「弁当の日」を小中学校にも取り入れてもらえたらと思っています。高崎市第5次総合計画書の「行動計画 母性並びに乳児及び幼児等の健康の確保及び増進」の「食育」の項に「朝食欠食など食習慣の乱れや思春期におけるやせ形志向などが、子どもの心とからだの健康に大きく関係しており、発達段階における正しい食事の取り方や食習慣の定着、食を通じた家族関係づくりや心身の健全育成を図ることが求められています」と書かれていました。これを読んで、給食の代わりに年に何回か「弁当の日」を実施すれば、特別な予算をつけなくても簡単に改善されていくのにと思いました。





(上毛新聞 2012年3月3日掲載)