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NPO法人「三松会」理事長  塚田 一晃(館林市高根町)



【略歴】東京都出身。曹洞宗大本山總持寺などで修行後、源清寺副住職に着任。1995年に三松会設立。両毛地域初の阿波踊り団体「上州みまつ連」代表も務める。


自分にできること



◎「福祉の葬儀」を仕事に



 お寺にいると、「私は何のために生きているの」と、問いかけてくる人が多い。私は生きているのではなく、生かされているのだから今、自分にできることを何かやりなさいと答える。

 人々の悩みや苦しみを聞き入れ、安心を提供し取り除いてあげるのがお坊さんの本来の仕事であると思う。しかしながら現状は葬儀・法事が主流になり、お金がなければ供養もできず、そのような人には、逆にお寺が悩みや苦しみを提供している世の中になってしまったような気がしてならない。

 私自身も実際、親愛なる人が亡くなりお葬式をあげたいが、お金がないがために火葬だけで済ませてしまった人を多く見かけた。

 お金がなくても、快く供養をしてくれる僧侶はたくさんいると思う。しかし、「お金がないのであれば、お寺さんをお願いするのは無理でしょうね」と、お寺まで情報が伝わらない現実もある。

 「ならば自分で、本当に困っている人専門の福祉の葬儀屋さんを立ち上げるしかない」と、会社登記をして葬儀社を立ち上げたのが三松会の始まりである。

 お坊さんが葬儀社を始めることに、最初は住職の大反対もあったが、妻の理解と協力で始めることができた。お金をかけられないので棺ひつぎは私がお寺の裏のプレハブで作り、病院への搬送も妻と二人で24時間関係なく行った。

 病院では僧侶が霊きゅう車に乗って迎えに行くわけだから、反響は大きく、多くの人々から励ましの声をいただき、情報もすぐに広まった。

 親族のいない方は私がお葬式をあげ、霊きゅう車を運転して火葬場へ行き、読経し収骨をしてお寺に帰って来るという、一人で僧侶と葬儀社と親族の3役もこなした。お寺のお坊さんが棺桶を作るわけだから、最初は戸惑いもあった。お寺の世界では非難もされている。しかし、お坊さんが病院まで迎えに来てくれて、お坊さんが作った棺桶に入れて供養を受けられるなんて幸せと言う方も多い。

 お坊さんが福祉の葬儀屋をして何が悪いのか? 社会では大きな支持をいただいていると思うが、そこからも、社会とお寺の温度差がなぜこんなに広がってしまったのだろうと悩んでしまう。在宅で孤独死をされた方などは死後の処置からしなくてはならない。ぜひ、そのようなことをお坊さんには体験していただきたい。それをした時、命の尊さを真に学ぶことができると思う。

 冒頭に述べた「今、自分ができること」を考えた時、できることはいろいろあるかもしれないが、私は三松会を立ち上げたことで、多くの人の悩みや苦しみに応えることができていると思う。今ではこれが本来のお坊さんの仕事だと思ってやまない。






(上毛新聞 2012年3月7日掲載)