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視点 オピニオン21
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繊維製品企画会社グラムス社長  松平 博政(桐生市境野町)



【略歴】流通経済大卒。繊維メーカー勤務を経て2005年に独立。桐生市イクメンプロジェクト推進チームリーダー。NPO・ファザーリング・ジャパン会員。


スウェーデンの子育て



◎地域ぐるみ将来へ投資



 自宅を出てから23時間。パリを経由してストックホルムのアーランダ国際空港に降り立った。これから1週間、家族と離れてこの街の子育て事情を探る。出発前、妻にも何とか理解してもらい、子どもたちにはお土産を約束して旅立った。スウェーデンといえば、世界有数の子育て先進国だ。パパクオータ制、大学までの教育費無料化、育児休業中の保障など、仕事と家庭を両立しやすい社会を実現している。日本とは制度や社会背景も違うが、スウェーデンも30年前は、いまの日本と同じような育児環境だった。スウェーデンのこれまでの歩みを振り返ると、日本のこれからの道が見えてくるはずである。

 今回の視察で特に参考にしたい2施設を例に挙げる。まずストックホルム市が運営する「Rumforbarn」という子どものための図書館だ。0~12歳対象で入場無料。大人だけの入場は原則不可で、1日600~800人の受け入れが可能だという。観光客もよく利用する。平日の午後だが、パパがとても多い。ここでパパ友になることもある。ママが仕事を終えた夕方にパパと待ち合わせするケースも多い。子どもの居場所をつくるため、また、親子で本を楽しむ場所をつくるため脳科学者や保護者からヒアリングしてデザインセンスあふれる内装をつくりあげた。地元の工房が家具を製作したり、小売店がスポンサーになるなど、地域ぐるみで子どもの将来のために投資する姿勢を見習いたい。

 次に「Palatset」。子どものための文化宮殿というこの施設は、公的機関や企業の手厚い支援を受けて、古い宮殿を改修して華々しくオープンした。6~18歳対象の有料文化施設で、制作工房、劇場、衣装部屋、スタジオ、デザインなどを楽しく体験できる。「子どもが自分の能力を信じてもらえる、高く評価してもらえる機会を得て、自己実現させ、子どもの人生を変えていく」ことをコンセプトに掲げていた。だが、実は3カ月あまりで倒産した。当初の経営計画が破綻したとのこと。この失敗からは大いに学ぶところが多い。建物の仕掛けやデザインなどは大人もワクワクするものだしコンセプトも素晴らしいが、経営的には全く成り立たなかった事実から、どのような解を導き出すのか。

 私がリーダーを務める桐生市イクメンプロジェクト推進チームのように、行政と民間がタッグを組む事業を成功に導くには、経営感覚が欠かせない。ここに仕事と育児に奮闘するパパたちの力が大いに活用できるのではないか。私たちは、子どもたちに将来への希望を見いだしてもらいたい。今回の視察を参考に、職業体験なども交えた独自のプログラムを開発し、桐生市を子育てしやすい街にすべく、今日もパパたちは企画を練っている。





(上毛新聞 2012年3月24日掲載)