,

視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
読み聞かせボランティア  片亀 歳晴(玉村町樋越)



【略歴】太田高卒。伊勢崎市職員を経てアート記録設立。解散後、ボランティアに専念。小さな親切運動本部特任推進委員、紙芝居文化推進協議会会員、玉村町選管委員。


現代ボランティア考(3)



◎「小さな親切」紙芝居に



 私が紙芝居づくりに取り組んだのは「まんてん紙芝居の会」(平田万壽子会長)に入会してからのことです。同会は、伊勢崎市在住の郷土史家である星野正明さんが収集している近隣の民話・伝説を紙芝居に残そうという趣旨で設立されたサークルの一つで、同市殖蓮公民館を活動拠点としています。

 さて、その製作は5作まで何とか完成しましたが、その後、筆が進まなくなったとき、たまたま目にしたのが「小さな親切」運動本部が編集した『涙が出るほどいい話』という本でした。そこには、小中学生や一般社会人から寄せられた「親切をした」「親切を受けた」「他人の親切を見た」という作文やメッセージが掲載されており、私はその内容に、まさに涙が出るほどの感動を受けたのです。

 そこで、ひらめいたのが、この作文をもとに紙芝居を製作できないかということでした。当然のことながら、著作権を有する同本部の了解を得た上、早速その作業に取り掛かりました。現在、全58作のうち37作は「小さな親切」関係です。私は作品ができ上がるたびに、本部を通じて作文を書いた人にあて、コピーをお送りしています。その結果、多くの人から「私の作文を紙芝居にしていただきありがとう」という趣旨の手紙をいただいたり、中には私にぜひ面会したいと、わが家までおいでいただいたご夫妻もいました。

 さらには「わが子が書いた作文の紙芝居を学校で公演してほしい」との要望もあり、それに応えて鶴岡市や静岡市の小学校まで出向いたこともありました。私はこの紙芝居づくりを契機に「小さな親切」運動本部の正会員に登録し、今日に至っています。

 同本部は1963年、東大総長であった茅誠司氏の提唱で組織され、現在、約25万人の会員を擁する団体です。氏は物理学者として文化勲章も受章していますが、学問を教えるだけでなく「小さな親切」に理解を示し、同本部の代表を23年間も務め、指導的立場にあったことは、まさに人生の師と言えるのではないでしょうか。

 本部は、主に環境美化や全国の「親切さん」の表彰に取り組んでいるほか、東日本大震災に際しては義援金の贈呈や紙芝居による慰問もしてきたとのことです。私は昨年4月10日、他の紙芝居関係者とともに片品村で避難生活を送っている人たちに紙芝居を見ていただきました。

 本部会員の種類には正会員、個人会員、さらには学校・企業単位のグループ会員(10人以上)があります。私は本部の特任推進委員として、その活動の発展にささやかながらも心を砕いています。小さな善意で大きな奉仕活動の輪を広げる―この理解者である会員の皆さんも、かけがえのないボランティアだと思っています。







(上毛新聞 2012年4月7日掲載)