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視点 オピニオン21
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シンクトゥギャザー代表取締役  宗村 正弘(太田市新田早川町)



【略歴】足利市生まれ。富士重工業で車体設計を三十数年担当。退社後、2007年、工業製品開発を支援するシンクトゥギャザー設立。群馬大次世代EV研究会メンバー。


小さいバッテリー



◎利点多く新ビジネスも



 今回はマイクロEV(超小型電気自動車)を走らせるバッテリーについての話です。弊社のマイクロEVのバッテリー容量は、カーメーカーEVの10分の1から15分の1しかありません。バッテリー容量が少ないので1回の充電で走れる距離が短いという弱点もありますが、良いこともたくさんあります。

 1 充電が早い

 家庭での充電時間を比較すると、メーカーEVは8時間、弊社マイクロEVは3時間です。メーカーEVは1日1回充電が基本になりますが、マイクロEVは1日2~3回充電が可能です。1日に走れる距離はメーカーEVとさほど変わらないと言えます。

 2 手軽にどこででも充電

 メーカーEVはAC200ボルトの電源が必要ですが、マイクロEVは普通のAC100ボルトです。どこにでも来ている電源ですから、どこででも充電することができます。

 3 バッテリー重量が軽い

 メーカーのEVは150キログラム~250キログラムのバッテリーを積んでいますが、弊社マイクロEVはたったの15キログラム。両手で持ち上げられる重量ですので交換作業が容易に行え、バッテリー交換サービスという新しいビジネスも実現可能です。バッテリーステーションに立ち寄ってフル充電されたバッテリーに交換しながらどこまでも走り続けられるEVも実現できます。

 4 バッテリー価格が安い

 メーカーEVの価格が高いのは、バッテリーのコストが高いからです。車両コストの半分はバッテリーコストが占めているそうです。マイクロEVはその分、バッテリーコストが格段に安くなりますので、車両価格も安価にできます。弊社では軽自動車以下の価格を目指しています。

 5 自然エネルギーだけで走れる

 小水力、ソーラー、風力などの自然エネルギーによる小さな発電電力をストレージバッテリーに蓄え、そこからマイクロEVのバッテリーを充電することができます。最近、群馬大学と桐生市は市内の動物園に約0・5キロワットのソーラーパネルを装備したガレージを設置して、自然エネルギーだけで充電したマイクロEVトラックを動物園の作業車として使う実験を始めました。ちなみに、このガレージは外部からの電源供給を一切受けることなく、マイクロEVの充電のほか、必要な電力のすべてをソーラーパネルの発電だけで賄っています。これぞ地産地消の極みと言えるでしょう。

 このように搭載するバッテリーが小さいことが数多くのメリットをもたらすわけで、マイクロEVを軸にした新しい発想のビジネスを創出することもできるでしょう。

 Let’s think together!








(上毛新聞 2012年4月11日掲載)