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高崎経済大教授  久宗 周二 (千葉市緑区)



【略歴】横浜市生まれ。高経大卒、日大大学院生産工学研究科博士前期課程修了、北大大学院博士(水産科学)取得。高経大准教授を経て、2010年4月から現職。


北海道・釧路港にて



◎被災地の漁船も頑張る



 今年3月11日で、東日本大震災から1年がたちました。あらためて、地震や津波で亡くなられた方々に謹んでお悔やみ申し上げます。それとともに、被災された全ての方々に、心からお見舞い申し上げます。今回は、昨年の秋に私が出会った、頑張っている被災者について書きたいと思います。 前年度、私は北海道漁船海難防止・水難救済センターの協力を得まして、北海道4カ所で「自主改善活動の講習会」を行いました。自主改善活動は、働く人たちが全員参加して、自分の職場について自ら気づき、自らの手で改善していく活動です。国土交通省の「船内労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン」解説の中で、推奨すべき方法として紹介されており、フェリーや貨物船、漁船ばかりでなく、一部の工場や教育の場でも取り入れられて効果を上げています。

 その活動の一環で昨年10月、北海道の釧路の漁業者に「自主改善活動」の講習会を行いました。私は講習を行う前に必ず現場に出向き、「よい点」と「改善点」を写真に撮り、講習会に活用しています。

 その日も朝、ホテルで自転車を借りて釧路港に行ってみました。漁を終えてサンマを満載した棒網漁船が着岸して、次々と水揚げをしていきました。入れ替わり何十隻も着岸する中で、ふと船尾に書いてある船籍港を見ると、地元北海道の「釧路港」「函館港」ばかりでなく、岩手県の「釜石港」、宮城県の「石巻港」「気仙沼港」「歌津港(南三陸町)」など、被災地に船籍がある船が続々と着岸しました。そして、他の船と同様に船員さんたちは一生懸命、捕ってきた魚を水揚げしていました。釧路で水揚げして販売したお金が被災地の家族に送られ、被災地の復興に役立てられるのだと思うと、感動しました。

 釧路からの帰りの飛行機は、岩手県中部から宮城県へ海岸線に沿って南下していきました。上空からかすかに見えたのですが、街があったであろう平野部に、更地が広がっている光景が続いていました。ただ、平野部を除いた部分には緑豊かな山々が広がっていました。

 大震災以前の生活に戻ることはできません。立ち止まるか、復興に向けて少しでも前に進むかの2択しかないのです。そこには漁業という仕事を生かして、遠く離れた北海道で一生懸命働いている被災者の人たちがいました。その他の被災者も全国各地で、生活の再建、復興に向けて一生懸命働いているのだろうと想像できます。私たちにできることは、募金やボランティア活動も大切ですが、日々の生活で国内産の農産物や水産物を買うことも間接的ではありますが、被災者支援に役立っているのではないかと感じました。







(上毛新聞 2012年4月12日掲載)