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四万温泉協会長  柏原 益夫 (中之条町四万)



【略歴】中之条町生まれ。群馬大工学部卒。柏屋社長。2010年から四万温泉協会長。四万温泉や宿を日本のみならず世界の人々に知ってもらう方策を日々模索中。


温泉街の雰囲気後世へ



◎空き店舗対策も重点に



 「世のちり洗う四万温泉」。このフレーズを支える大きな要素は、昭和レトロな雰囲気たっぷりの温泉街の存在です。細い路地にスマートボールや飲食店が並ぶ落合通り、文化財級の木造建築旅館、古い木造校舎などは映画やドラマのモチーフやロケ地にたびたび使われています。

 前回、四万温泉はどんなカテゴリーやポジションで1番なのか? という話をしましたが、この雰囲気は間違いなく四万温泉ならではの風景だと思います。雰囲気が守られているのは、現在、四万温泉に住んでいる方々の長年にわたる努力のたまものです。私たちは先輩方に残していただいた、この商店街を昭和レトロな雰囲気あふれる活気ある温泉街として後世まで残し、発展させていこうと考えています。

 そして、そのための取り組みも既にいくつか始めていますのでご紹介します。

 まずは、お客さまに温泉街を歩いていただく仕組みづくり。「和洋スイーツ巡り」は、旅館や商店の皆さんの手作りプチスイーツを楽しみながら温泉街を散歩していただけます。一昨年から始め、この春は30以上の旅館や商店でスイーツを楽しんでいただけます。

 四万川に沿って細長い四万温泉街。散歩しながらの休憩ポイントとして整備してきた「ポケットパーク」は、足湯や飲泉、四万ならではの写真が撮れるピクチャースポットなどをちょうどよい距離感で配置することで、お客さまの歩きやすさを高めています。

 次に、商店街自体の魅力向上です。閉まっているお店がなく活気ある街にするため、空き店舗情報をデータベース化したり、町役場にも協力をいただき、軌道に乗るまで家賃の一部を補助する仕組みを整備したりして、空き店舗対策に力を入れています。

 その結果、この春からひとつの空き店舗に、アーティストの方が引っ越してきてくれることになりました。いまも引き続き、新しく四万温泉に住んでくれる方を募集中です。

 しかし、乗り越えなければならない課題も多く、現実は甘くありません。特に最近は、私たちが取り組んでいるスピードよりも早いペースで空き店舗が増え、高齢化が進み、地域の人口が減ってきています。これは四万温泉だけの問題ではありませんが、田舎や温泉地の活力が低下しつつあるのは大きな問題です。

 でも、自然に囲まれた田舎で働いてみたい、小さなお店でいいので起業して自分を試してみたい、そう考えている人も日本中探せばたくさんいるはずです。そんな人たちに、四万温泉の取り組みや思いを知っていただき、仲間入りしていただくことも、喫緊の大きな課題です。








(上毛新聞 2012年4月14日掲載)