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視点 オピニオン21
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NPO法人グリーンハート理事長  横堀 充則 (伊勢崎市太田町)



【略歴】伊勢崎市生まれ。明和県央高卒。飲食店経営。2009年、市内の若者の活動拠点としてNPO法人を設立。波志江沼イルミネーション実行委員。


「今」を楽しむ



◎自分の歩幅で人生散歩



 私はNPO法人を運営する傍ら、伊勢崎市内で「double」というダイニングバー、前橋市内で「旬彩」というランチメーンの飲食店を経営しています。その収益をNPO活動に充てんしています。前橋の飲食店は4月にオープンしたばかりですが、伊勢崎店は私がNPO法人を設立する以前から営んでいます。経営方針は「全てにおいて遠回り」です。これは店舗改装、材料調達、宣伝などにお金をほとんどかけないということです。人と人のつながりで全てをこなし、今があります。店内は全て手作りですが、材料ひとつ取っても購入はしないで、建築現場等で不要になった廃材を使います。宣伝も口コミのみです。

 リフォーム技術の修業に開店前から出ていました。資金は驚くほど低額で開店にこぎつけました。物事を進め、かなえていくために必要なのは「人と比べず、心の落としどころを見極める」といったことではないでしょうか。少し前は目標をかなえるために、多額の資金を借り入れることが当たり前でもありました。人生をギャンブルに例え、成功者は美談として語ります。しかし、人生は一度きり、失敗もつきものです。自分の生き方のマネジメントも忘れてはいけません。背伸びせず、自分の身の丈に合った目標のかなえ方を考えることは、今の時代には大切なことです。目標を1カ月でかなえる人、10年かかる人…大切なのは「その瞬間を楽しめるかどうか」だと思います。

 お店の全てに思い出があり、人の恩が詰まっています。誰にもらった材料で、いつ作ったか、手伝ってくれた人は誰だったか。人のつながりもさることながら、自分が一番楽しんでいます。何かに行き詰まった時、一呼吸おいて自問自答します。「今が一番楽しいか?」。人として楽しめなくてはもったいない。人生の「今」を誰よりも楽しむために私は仕事をしています。お金を稼ぐことを目標にはしていません。私は今を楽しむプロフェッショナルと自負しています。

 皆さんには目標はありますか。もしないのなら、人に会うことです。そして共感する夢を探してみてはどうでしょうか。目標があるのなら、考えてみてください。それに共感する人はいるか? 自分が一番楽しめているのか? 成功者をうらやむことはありません。車で走っているときは道端の小さな花に気づかないように、自分自身の歩幅で人生を散歩してみてはどうでしょうか。それが「心の落としどころ」ということです。人生の道のりをスポーツカーで駆け抜け、より遠くへ行くか、散歩しながら風景を楽しみながら生きていくか。

 全ての人に平等に与えられた時間をあなたはどのように生きていきますか? 私は現在30歳。散歩しながらゆっくりと季節の風を肌で感じながら生きていこうと思います。






(上毛新聞 2012年4月29日掲載)