,

視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
NPO法人「三松会」理事長  塚田 一晃 (館林市高根町)



【略歴】東京都出身。曹洞宗大本山總持寺などで修行後、源清寺副住職に着任。1995年に三松会設立。両毛地域初の阿波踊り団体「上州みまつ連」代表も務める。


現代の墓地事情



◎時代の変化に柔軟対応



 三松会をしていると、現代の墓地事情について、本当に勉強させられる。

 先日も「私はどっちのお墓に入ればいいのでしょうか」と相談してきた人がいた。話を聞くと、当事者は若い時に夫に先立たれ、A寺の檀だん家かになった。しかしその後、B寺に先祖代々の墓地がある一人っ子の人と再婚したが、その人にも先立たれてしまい、B寺の檀家にもなってしまった。当事者は両方のお寺に檀家登録され、護寺会費などを両方のお寺に納めている。子どもに恵まれず、今後お寺に相談に行くにもどうしたらいいのか本当に困った様子だった。

 また、妻を亡くし埋葬供養している一人暮らしの夫が再婚し、次はその夫が亡くなってしまったなどの先妻後妻の問題もある。後妻はもちろん先妻の埋葬されている墓地には夫を埋葬したくないが、夫の両親が埋葬されている墓地なので埋葬しなくてはならず、後妻は先妻と夫が一緒に埋葬されているA寺の檀家になってしまった。後妻がそのお墓に入りたいと思う思わないは気持ちの問題だが、残された妻が、またどこかに先祖の墓地がある方と再婚しようものなら、もう訳が分からなくなる。

 昔の結婚はお見合いが多く、親同士の中で結婚し、お互いに先祖を敬い、先祖供養というものは大切にしてきた。生活の中で不満や価値観の違いはあったとしても、合わせる努力や我慢をするのはあたりまえだった。しかし、最近は合わせる努力もしないし、いやだったらすぐ別れてしまう。離婚や再婚があたりまえのように語られるようになり、子どもたちは家族を失ってしまい、それが原因となって先祖供養・墓地問題への関心が薄くなってしまっているのではないか。

 墓地も長男が後を継ぐというのは崩壊している。現在では墓地の管理は継ぎたい人が継ぐ時代である。少子化により、一人娘が嫁いでしまった家庭などの先祖の墓地も問題である。また、最近の若年層では先祖や両親が埋葬されているお墓はあるが「私はそこには入らない」という人が増えている。確かに檀家制度は明治維新でなくなってはいるのだが、檀家制度は異教徒弾圧のためにできたものでもあるので、基本的に日本の全国民が仏教徒であることが前提でなければ成り立たないのではないだろうか。もし、結婚した相手が熱心なカトリック教徒だったらお寺はどのように対応するのか。日本の教育の中に宗教教育がないのも問題だと思うが、お寺はこのまま檀家制度を当てはめて物事を考えていたら、そのうち行き詰まってしまうと思う。

 これからの寺院運営は時代の流れや変化を感じ取り、思想の変化に柔軟に対応していかなくては本当に孤立してしまうような気がしてならない。







(上毛新聞 2012年4月30日掲載)