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帝国データバンク太田支店長  西村 泰典 (太田市飯田町)



【略歴】宮城県塩釜市生まれ、東京都大田区育ち。神奈川大卒業後、帝国データバンク入社。業務部や人事部、調査部、広島支店情報部長などを経て2011年3月から現職。


景気は踊り場を脱す



◎反転攻勢に出る企業も



 仕事柄、景気動向を把握するため、さまざまな統計資料に目を通すことが多い。ただ数字だけを追いかけていると肌感覚がつかめないので、日本一の商業地、銀座のビルの屋上広告などを定点観測するようにしている。先日も銀座4丁目の交差点に立ち、おのぼりさんよろしく空を見上げると、有楽町方面のビルの上はにぎわいが戻っていたものの、東銀座方面は三越裏のビルから屋上広告に空きスペースが目立ち、波田陽区の「残念」というギャグを連想してしまうくらい寂しい景色が広がっていた。

 4月4日発表の弊社の景気動向調査によると、景気DIは38・3、前月比2・0ポイント増と4カ月連続で改善した。地域別に見ても全10地域が8カ月ぶりにそろって改善したほか、多くの課題が山積みする中、米国や新興国向けの外需に支えられ、内需では復興需要の増加や個人消費の復調により、企業の生産活動が回復、2年ぶりに全12業種がそろって改善するなど、景気は踊り場を脱し、緩やかな回復局面へ向かいつつあることが示されている。

 少しでも明るい話題を提供しようと、最近のセミナーでは冒頭に必ず景気動向に関する話をするのだが、会を終え、主催者の方々と反省と慰労を兼ねて杯を傾けている時などには、本当のところはどうなんですか? と、再度景気に関する質問を受けることが多い。私の説明不足もあると思うのだが、多くの企業経営者にとっては、景気回復の実感に乏しく、にわかには信じがたいらしい。

 県内では、昨年冬のボーナスが支給された企業は5割にとどまるほか、好調が伝えられる自動車関連業界でも扱い品目によっては、受注減少から雇用調整を余儀なくされている会社もある。むしろ、円高やガソリン・電気料金の値上げ、材料費や労務費の上昇などに加え、得意先からのコストダウン要請など、経営者の頭痛のタネは増えているようにも見える。

 新聞やTVでは、シャープやパナソニックなど、有名企業の業績悪化が取り上げられ、「第3四半期決算で巨額の赤字計上」「通期でも大幅な業績悪化が避けられない見通し」など、暗い見出しが目につく。国内大手家電メーカーの失速は、当地においても、下請け先など幅広い企業に悪影響を及ぼすことが予想されるだけに、経営者の将来に対する不安は、むしろ増大しているのかもしれない。

 質問は不安の裏返しでもあるのだろう。確かに、景気は直近ピーク時の3分の2程度まで戻してきている。規模の大小を問わず、今こそチャンスと反転攻勢に打って出る企業も多い。経営者が先頭に立ち業績をつくっていく覚悟なのだろう。経営に弱気は禁物だ。






(上毛新聞 2012年5月3日掲載)