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視点 オピニオン21
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作曲・編曲家  福嶋 頼秀 (東京都板橋区)



【略歴】前橋市出身。前橋高、慶応大卒。会社員を経て、作曲・編曲家として活動を開始。オーケストラや和楽器の作品を多数発表。演奏会の企画・司会も手掛ける。


子どもに多様な音楽を



◎感性育む工夫盛り込む



 ゴールデンウイークには各地で、ファミリーや子ども向けの音楽会が多数開催されました。県内では群馬の森(高崎市)で毎年行われる“森とオーケストラ”という屋外コンサートなどが有名です。こういった音楽会では、親しみやすい童謡・唱歌が歌われたり、耳なじみのクラシック音楽が演奏されたりします。その内容はみなさんが気軽に楽しめることはもちろん、子どもの感性を育む工夫等々も盛り込まれているのです。

 沼田市出身でNHK『おかあさんといっしょ』の歌のおねえさんやNHK『すくすく子育て』の司会を務め、たくさんのコンサートにも出演して活躍中の、つのだりょうこさん。彼女の歌や司会は明るく楽しく、いつの間にか子どもたちを音楽の世界に引き込んでしまいます。つのださんに、その工夫をたずねてみました。「親子で歌える歌や手遊び歌などを、必ず盛り込むようにしています。こういう曲はみなさんも参加できるので、コンサートをより積極的に楽しんでもらえるのです。それに客席とステージの一体感もたまりませんよ!」

 私自身も子ども向けコンサートの企画や編曲を時々しますが、そんな時にこだわるのは“音楽の面白さやいろいろな楽器の特徴を、あますことなく伝える”ということ。例えば『おもちゃのチャチャチャ』を歌とオーケストラで演奏できるように編曲するとしましょう。リズムはもちろん“チャチャチャ”で、打楽器が大活躍。「ラッパならして」という歌詞の部分ではトランペットを目立たせ「そらにさよならおほしさま」では寂しい和音を鉄琴が奏でる…。それは「子ども向けに単純な伴奏にする」のではなく「物語にあわせて劇的な音楽に仕立てる」といった趣向です。

 東京家政大学の保育園・ナースリールームの主任保育士で、乳幼児教育の本も多数執筆している井桁容子先生もこう言っています。「子どもだからこそ、さまざまな音楽を聴かせてみましょう。時には難しそうな音楽でも、子どもたちは先入観なく楽しんだりするのです。そういった中で感性を育むのもいいですね」

 ところで、先のつのださんの歌を聴いて、いつも強く感じる点があります。それは“歌詞の内容がとてもよく伝わる”ことなのですが、その秘密も聞いてみました。「音を聞くといろいろな風景や絵などのイメージが浮かぶのです。例えば『春の小川』では、小学校の帰り道に遊んだ田んぼのあぜみち。子どもができてからは、身近な草花や虫ももっと意識するようになりました。それから、息子が思いのままに貼り付ける色とりどりのシールは、『おもちゃのチャチャチャ』の世界観にぴったり」。身の回りの子どもの世界に共感しつつ、一緒に音楽を楽しむことも大切なことなのです。







(上毛新聞 2012年5月8日掲載)