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見城農園  見城 玲子 (渋川市渋川)



【略歴】伊勢崎女子高、文化服装学院卒。1976年に結婚後、渋川市へ。主婦の傍ら25年ほど前から夫の彰さんと趣味で果樹栽培を始め、規模を拡大してきた。


西洋梨



◎産地で異なる味や形



 西洋梨はヨーロッパ、アメリカ等を合わせると1000種ほどが栽培されています。そのうちの150種ほどが日本に導入されていますが、日本で西洋梨といえばラ・フランスという人が多いと思います。西洋梨とラ・フランスを同じものと思う人も多く、「西洋梨を栽培しています」と言うと、すぐに「そうですか、ラ・フランスをつくっているのですか」との答えが返ってきます。「いえ違います。コミスという西洋梨をつくっています」と応じると、今度は「コミスというラ・フランスをつくっているのですか」という珍問答になります。

 「ラ・フランスはフランスを代表する西洋梨」という文言を良く見かけますが、名前にフランスという文字が使われているだけで、フランスを代表する西洋梨ではありません。ラ・フランスを栽培しているのは日本だけです。フランスでは気候・風土が合わず、一切栽培されていません。

 西洋梨は樹上で完熟させると、果肉が粉っぽくなり肉質が落ちます。そのために完熟前に収穫します。コミスの収穫時期は花の満開から160日後となります。収穫したコミスは0度の冷蔵庫で20日ほど冷蔵して果肉を締めます。冷蔵庫から出した後、常温で12日保存すると果肉が黄変して食べごろとなります。

 「西洋梨は食べごろが分からない」という声をよく聞きます。ほとんどの西洋梨は食べごろになると果肉が黄変して果皮の変化で分かります。ごく一部の品種は食べごろになっても果皮が黄変しません。ラ・フランスは果皮が黄変しない品種ということになります。

 近ごろでは、ル・レクチェやゼネラルレクラーク等の品種も店頭等で見かけるようになりました。

 人口が減る中、果物の需要も減少傾向にあります。しかし、西洋梨だけは毎年、わずかではありますが需要が増加しています。徐々に西洋梨はうまいということが認知されてきたようです。生産者として消費者の皆さまへのお願いなのですが、うまい西洋梨を食べたら必ず生産地をメモしておいてください。生産者まで分かれば最良です。

 西洋梨は果物の中で気候・風土に最も左右されます。北に行くほど果実は細長くなりますし、味も変わってきます。産地により果実の味や形の変化が一番激しいのがル・レクチェです。ル・レクチェは新潟県が一大産地ですが、北部・中部・南部で味や形がまるで違ったものとなります。

 適地・適作で作られた西洋梨は間違いなく果物の王様です。ぜひラ・フランス以外の西洋梨もご試食ください。






(上毛新聞 2012年5月11日掲載)