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視点 オピニオン21
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NPO法人「生きる塾」理事長  渡辺 謙一郎 (太田市新田早川町)



【略歴】太田市生まれ。樹徳高卒。小学生のころから障害のある人たちと一緒に過ごし、福祉への関心を高めた。日本メンタルヘルス協会認定カウンセラー、辺重社長。


竜巻被災地を見て



◎「人の力」の大きさ実感



 5月6日、茨城県、栃木県で竜巻が起きました。私はその日、家族で水戸に行っていました。今思うと水戸の空も黒い雲と黄砂でとてもきれいとは言えない空でした。帰りの道中も豪雨とひょうに降られ、走れない状態でした。

 帰宅後、とんでもないことが起きていたことを知り、翌日、茨城県つくば市と栃木県真岡市へ調査に入りました。団地1棟40戸ぐらいでしょうか。全部ガラスが割れているのには驚きました。津波に対する避難の仕方とは違い、ガラスのない部屋、建物の真ん中の通路や部屋に逃げなければいけないと痛感しました。

 真岡市は野菜などのビニールハウス損壊が目立ちました。田んぼや校庭などにガラスが飛散していて拾うのが大変という話を聞き、私たちは真岡の災害ボランティアセンターへボランティアの申し込みに行きました。つくば市もそうでしたが青年会議所などが先頭に立ち、地域の人たちを引っ張っていました。頼りになるのはやはりボランティアなどの団体だと、この時つくづく思いました。

 市町村の対応も早かったと思います。東日本大震災との違いは「被災規模」「対応できる人の数」ではないでしょうか。被災規模は復旧にかかる費用と関係します。市町村だけで賄えず、国に頼らなければいけない規模なら時間がかかります。なぜか。省庁、県、市町村にそれぞれ話をします。それでまとまるかはやってみなければ分かりません。国は「市町村で決めればやります」、市町村は「国が決めてくれればできる」と言う。また国に話に行くと「県がまとめている」。いわゆるたらい回しになって物事が進みません。笑い話のようですが、実際に私は震災復興支援の件で体験しています。

 次の「人の数」ですが、震災では多くの命が亡くなってしまいました。今回の竜巻では幸い、大勢の人が地元の復旧に一斉に取り組むことができました。やはり人の力は大きいと実感し、私もあらためて周りの人々に感謝の気持ちがわきました。

 福島県でボランティア「すすめ ふくしま」に加盟させていただきました。郡山市の子どもたちはまだ屋内の公園で遊んでいるそうです。私も子をもつ親として、心から悔しさが込み上げてきました。福島県庁や郡山市役所で、生活空間における放射線の話をしました。県も市も話すのは放射線測定結果のこと。しかし住民は数値を知らないし、知っても信用できないとのことでした。

 太田市は震災発生当初から東北を支援しています。4月には地元の野菜を被災地に届けようと企画し、太田の子どもたち30人が同行して野菜を配りました。現地で拝見しましたが、子どもたちは人に喜んでもらえる素晴らしさを知り、引率の職員も童心に戻ったような笑顔で活動をしていました。







(上毛新聞 2012年5月24日掲載)