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◎見守り手を差し伸べる 新学期を迎え、小学校では、転任や退職された先生方を迎えた離退任式が開かれたことでしょう。当日、長男は、転任した先生に会えるのをとても楽しみにしていました。その様子を見て、私の記憶は三十数年前に飛びました。 保育園に入ったばかりのころの私は、大泣きをして、送ってきた母の自転車にしがみついていたのでした。担任の先生だけでは手に負えず、他の先生2人も加わり、はがされるように登園していた記憶がよみがえりました。 また、小学校の時、私は友達とのトラブルに悩んで落ち込むことも…。そんな時、私の長所を認め、自信を取り戻す気配りをしてくれた先生がいました。そして問題が解決するように、手を差し伸べてくれたように思います。 中学生になってからは、父の転職に加え、個性的な子が多いクラスになじめませんでした。いろいろなことが重なって、自分の居場所がわからなくなりました。ふてくされている私に対して、担任教師からもらった言葉は今も胸に響いています。「あなたは悪い子じゃない」。ことあるごとに語りかけてくれました。 印象深い3人の先生は私を見守り、悩んだ時に手を差し伸べ、乗り越えることを信じてくれました。そんな先生たちに出会えたことは、私の宝物のように思います。 先生との出会い同様、友達との出会いもかけがえのないものでした。手を焼かせた保育園では、仲良しの友達ができたことで活発になりすぎ、保育園を脱走して近所で遊び、先生を驚かせていました。小中学校では嫌なこともありましたが、楽しい時期もあって、今でも交流のある友達ができました。振り返ると、悩んだ時期にも、そばで応援してくれる友達がいて、いろいろな経験が今となってはかけがえのない心の糧となっています。 離退任式後、転任した先生を送り出した小学生の下校に遭遇しました。目を真っ赤にしている子と、大声で泣きながら全身で先生との別れを悲しんでいる子がいて、それぞれ優しく寄り添い、手をギュッと握って歩く姿でした。他人の目をはばからず悲しみを表現している子を見て、先生と信頼関係ができていて、先生の優しさを受け止めていたんだなぁ、としみじみ思いました。その光景は、いつの時代でも人と向き合い、受け入れて指導する先生の姿勢は変わらないというメッセージのように思いました。下校する子どもの後ろ姿に、明るい未来を感じた一時でした。 新年度が始まって1カ月以上がたちました。諸先生に教わった子どもの力を信じ、温かく見守れる母でいられるように、毎日心掛けようと思います。 (上毛新聞 2012年5月25日掲載) |