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◎黄土高原への植林進む わが国の各地に、春先よく見られる現象がある。黄砂現象である。黄砂は毎年偏西風に乗って飛来し、その量の多さによっては空が黄褐色に染まる時が度々あり、駐車中の車などはこの黄砂で汚れが目立つようになった。 黄砂の発生源は、中国のタクラマカンやゴビ砂漠等と黄土高原といわれている。 このうち、黄土高原の生い立ちと緑化の必要性を記してみる。黄土高原は主として山西省、甘粛省など7省におよび国土面積の実に6・5%を占めている。標高は1千~2千メートルの間にある。 中国の西側に隣接するタクラマカン砂漠から飛来した(約250万年~120万年前)黄土からなる更新世風成堆積物で厚さ数十メートル~400メートルが堆積している。砂の粒の大きさは0・002ミリ~0・02ミリのもので微砂と呼ばれる細かい砂が主で粘土分は少ない。(山中典和・2008年) この厚い砂が営農には適するのか、かつての森林は限りなく減少し、農地へと転じたのである。長年にわたるこうした人為的な影響や気候の温暖化、降水量の減少、乾燥化等により、土の流失は時々もたらされる集中豪雨によって重大災害の発生にまで至ることになっていくのである。 黄土高原の土の性質はどのようなものか触れてみる。それはちょうど、古くから親しまれている「落雁」という菓子に似ている。口に入れると湿りにより菓子の表面からトロリと溶ける。しかし、この菓子は強く乾燥されているため、すぐさま湿りは中にしみ込まない。黄土高原の土はこのような性質を持っている。したがって、この地の土壌は降雨によって水を地中深くまで浸透させることができず地表面を流れ、大地の弱いところが浸食され深い谷を形成する。その深さは100メートルを超すものも少なくない。しかも、垂直のカベ状を成すのである。 こうして作られた地形を専門的には「ガリ」と呼ぶが、このガリは無数にみられるのである。 聖なる河かわあるいは母なる大河として語られる黄河には、今も毎年約16億トンを超える土砂が流れ込むといわれ、多くがこの黄土高原に由来するものと聞く。私が初稿で記した黄河の水の色はまさにこれによるものである。 中国ではこうした状況を踏まえ、緑化のプロジェクトを立ち上げ植林事業に力をいれており、その姿勢は真剣そのものである。というのは、この黄土高原における緑化プロジェクトが他の地域に比して多数にあることからも推察できる。 かくして今日も、この広大な黄土高原の緑化事業は進行し、大切な大地の保全と森林の復元を目指している。 (上毛新聞 2012年5月30日掲載) |