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視点 オピニオン21
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四万温泉協会長  柏原 益夫 (中之条町四万)



【略歴】中之条町生まれ。群馬大工学部卒。柏屋社長。2010年から四万温泉協会長。四万温泉や宿を日本のみならず世界の人々に知ってもらう方策を日々模索中。


海外からの誘客



◎環境変化をチャンスに



 「世のちり洗う四万温泉」とうたわれる四万温泉ならではの世界は、日本人だけに受け入れられているのではありません。まだ絶対的な数は少ないですが、欧米の個人旅行を中心に、時折海外からお客さまがお越しくださいます。

 その方たちからも「温泉街の外湯や歴史」「隠れ家を体験したい外国人のために理想的」「美しい風景」などと非常に高い評価をいただいています。四万温泉を知っていただけさえすれば、たくさんの外国の方にも楽しんでいただけると確信しています。

 そこで、四万温泉では今年度、遅ればせながら海外のお客さまにどのように向き合うかを集中的に考えることにしました。他の地域とは違った、四万温泉ならではのターゲット層やマーケティング手法があると思っています。

 でも、昔も今もそして未来も四万温泉にとって最も大切なのは群馬、埼玉、東京などを中心とした関東周辺のお客さまで、四万温泉の泉質や雰囲気をこよなく愛していただいている皆さんです。これらの皆さんの四万温泉に対する良い印象が変わってしまわないよう、むしろ、さらに好感度が上昇するようにしつつ、課題に取り組んでいくつもりです。

 企業経営という視点に変えてみます。

 ある調査によると、震災前の一昨年でも宿泊を伴う国内旅行の回数は1990年代半ばの4分の3に落ち込んだという結果が出ていて、それを見ると、宿泊業や観光業は苦戦していると言わざるを得ません。そのためなのか、四万温泉に限らず、観光産業を生業としている人たちの中には、ある種のあきらめムードさえも漂っているよう思えます。しかし、マーケットを世界全体に広げて考えると、実は旅行産業は成長産業であると位置づけられています。

 そうなると、今の私たちの置かれている状況は、飽和する国内市場に対応するために、成長する海外市場を取り込む努力をし、成果を得てきた工業界のそれと似ています。もちろん、海外に頼らず商品力を強化し、国内市場で成功した企業もたくさんありますが、要は環境の変化にしっかりと対応してきたということです。

 そうです。あきらめている場合ではありません。

 今の観光産業は幸いなことに、国も群馬県も、海外からのお客さまを取り込むことに積極的に予算を付けています。このような流れに乗って、積極的に海外のお客さまを呼ぶか、他との差別化を図って商品力をさらに強化し、国内のお客さまに特化して営業するか、考え方は無限です。実は今は、ピンチではなくチャンス到来の時なのかもしれませんね。







(上毛新聞 2012年6月3日掲載)