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シンクトゥギャザー代表取締役  宗村 正弘 (太田市新田早川町)



【略歴】足利市生まれ。富士重工業で車体設計を三十数年担当。退社後、2007年、工業製品開発を支援するシンクトゥギャザー設立。群馬大次世代EV研究会メンバー。


電気自動車の新展開



◎屋内や公園での活用も



 これまで、公道を走る電気自動車を話題にしてきましたが、今回はもう少し範囲を広げて「モーターを原動機として使う自動車」というくくりでお話をしたいと思います。

 モーターを原動機に使うということは電気を原動力にして走るということですが、最大のメリットは排気ガスを出さない、音が静かということでしょう。

 一方、化石燃料を使う内燃機関(エンジン)は基本原理が爆発燃焼ですから、必ず排気ガスが発生しますし、大きな音も出ます。普段、皆さんが乗っている自動車は排気ガスや大きな音を、人体や環境、日常生活に影響を及ぼさない程度に抑え込む処置が施されています。しかしながら、排気ガスが全く出ない、音が全くしないということではありませんので、使える場所は排気ガスが大気に拡散しやすく、音が響かない屋外に限られてしまいます。また、人が多く集まる場所や自然が豊かな場所でも敬遠されます。

 屋内で使用する自動車や人が集まる場所、自然が豊かな場所などでの使用に適する自動車については、これまであまり考えられてこなかったのではないかと思います。排気ガスを出さず、音が静かな電気自動車はこのようなシチュエーションで使われる自動車にもってこいです。自動車=内燃機関自動車という概念では考えつかなかった分野・場所への電気自動車の展開を真剣に考えると、そこに新しいニーズ・シーズやサービスが生まれる可能性があります。

 例えば、屋内使用では最近増えている大型モール内での極低速周回バスサービス、空港ターミナル内でのタクシーサービス、広い工場内での見学客用遊覧車などなど。人が多く集まるアミューズメントパークや動物園、遊園地内での周回サービス、広い大学構内での移動用車両、国立公園や県立公園の中で使う車両などにも適していると思います。この具体例はほとんど公道を走行する用途ではなく、しかもゆっくりと走るということにお気づきになったでしょうか。そうです。電気自動車にはこれまで考えが及ばなかった使い方がたくさんあるのです。

 これまで、内燃機関自動車が向いていないため、あまり発展していない分野と言って良いでしょう。自動車というとどうしても公道走行を前提とした自動車に思いがいってしまいますが、筆者はこちらの新しい用途に大変興味があります。今後どんな電気自動車、どんな使い方、どんなビジネスが出てくるのか楽しみです。人々が便利性や豊かさを享受できるような電気自動車がたくさん現れることを期待しています。







(上毛新聞 2012年6月7日掲載)