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デザイン事務所代表  平野 勇パウロ (太田市内ケ島町)



【略歴】ブラジル・サンパウロ市生まれ。89年に来日。2010年から太田市と大泉町を中心に、ブラジル文化を紹介する日本人向けのフリーペーパーを発行している。


シュラスコ料理とは



◎友人ら招き家で楽しむ



 ブラジル経済が著しく成長すると同時に、ブラジル料理もまた注目されるようになってきている。特にシュラスコというブラジル風バーベキューは欠かせない料理の一つと言えるだろう。

 ブラジル雑貨店が並ぶ太田市・大泉町には多くのシュラスコ料理レストランがあり、気軽に味わえるようになった。なんといってもテーブルで大きな塊の串刺し肉を切ってくれるパフォーマンスが印象的だが、実はこのシュラスコ料理はブラジル文化と深い関わりのある料理だ。

 シュラスコとはポルトガル語でバーベキューという意味で、家庭で行うバーベキューのことも指す。一般的に肉は粗塩をベースに味付けする。粗塩は、ガウーショと呼ばれるブラジル南部のカウボーイたちが長距離移動の際、牛に与えていた栄養補給食の一つ。ガウーショたちが楽しんでいた料理が今のブラジルのシュラスコの起源だという説がある。

 リングイッサというブラジル風のソーセージやピッカーニャ(イチボ肉)はよく使われる肉だ。塩で味付けした単純な肉の炭火焼きのように見えるが、家庭によっては焼き方にとてもこだわり、ビールに浸したり、または肉の間にベーコンをはさんだり、よりおいしく焼き上げるためにいろいろな工夫を施している。

 ブラジル人はよく家でバーベキューをするが、大泉町に住む方ならその行われる頻度に驚かされるだろう。アパートに住んでいてもバーベキューコンロを持つ家庭も多い。実はブラジル人にとってシュラスコは、レストランで味わうより、家で楽しむ方がなじみのある料理なのだ。週末に友人や親戚を招き、シュラスコをしながらホームパーティーをする。シュラスコは主に男性が準備をするが、その理由は、家事に追われる女性を休ませるためとも言われている。シュラスコはブラジル人の生活の中で活躍することが多く、子どもの誕生日会、年末年始、あるいは結婚式まで、ブラジル人にとって交流のために欠かせないツールといえるだろう。

 大泉町では多くのブラジル雑貨店があるため、容易にシュラスコが家庭でできるようになった。しかしながら、日本では家でのバーベキューはあまりなじみがないため、シュラスコをどこでも行うブラジル人は煙と騒音のため近所迷惑の対象となるケースが多く、シュラスコ文化の理解が進まない状況がある。ブラジル人が多く在住する都市を中心に、多文化共生社会に向けて対策を考えなければならないことであろう。








(上毛新聞 2012年6月9日掲載)