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視点 オピニオン21
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アドベンチャーレース・マネジメント  竹内 靖恵 (みなかみ町鹿野沢)



【略歴】愛知県出身。1997年のアドベンチャーレース(AR)で日本チームの通訳を務めたことが縁でプロレーサー・田中正人と結婚。以降、ARの普及 活動に従事。


チームワーク



◎家族イベント通し育む



 アドベンチャーレース(AR)に勝つための要素として、身体能力、体力、精神力、技術、そしてチームワークがある。体力、身体能力、技術はある程度、個人の修練で身に付けることができるが、チームワークは個人の修練では習得しにくい。ではチームワークはどこで習得できるのか。その基礎をつくり、育むのが家庭(家族)ではないかと私は思っている。人が初めて属する社会が家族であり、そこにこそ人間関係の学び場があると思うのだ。

 私たちは毎年7月第4日曜の「親子の日」に、家族向けのAR「ファミリーアドベンチャー(FA)」を開催している。与えられた課題をチームでこなしながらゴールを目指すというARの特性を生かし、大自然の中を家族が一丸となってポイントを競うレースイベントである。

 課題はカヤック、オリエンテーリング、木登りなど少々ハードルが高い種目から、マス捕り、竹細工など手先の器用さが必要になる種目まで幅広い。場合によっては、木登りができてもマスを捕れなければ、チーム(家族)内で不協和音が鳴り響くこともある。それをいかに家族でフォローし合って乗り越えていくかがFAの意図だ。

 また、FAは順位(ポイント)を競うため、必ず勝敗がつく。「競争はよくない」という社会の風潮もあるが、競争することで、ものごとに真剣に取り組むようになるし、そもそも子どもは競争が好きなのだ。勝てば自信がつき、負ければ悔しくて次は頑張ろうと努力する。競争心は生きる力につながる。勝敗はこの生きる力を育むために与えられた課題にすぎない。ARで勝つ鍵ともなる「メンバー(家族)で作戦を練って協力し合う=チームワーク」「人の力ではコントロールできない自然を受け入れる=自然との調和と自己管理」「仲間を助けあう=信頼」「全員でひとつの目標に向かって頑張る=競争意欲」を学ぶ場のひとつとしてFAをつくり上げた。 大会では、初めての経験に最初は戸惑っていた子どもたちも次第に元気が出る。大はしゃぎする姿、順位を気にしながら一喜一憂する表情、楽しそうな笑顔、歯を食いしばって頑張る姿に、親たちはもちろん、私たちスタッフも励まされる。そして表彰式でメダルを胸にした子の誇らしげな顔や、残念ながら後方だった子の「来年、がんばるから!」と、少し恥ずかしそうな笑顔を見るとスタッフ冥みょうり利に尽きるのだ。

 家族一丸となって頑張った2日間は、ずっと子どもたちと家族の心に残るだろう。そう信じて今年も開催を予定している。現在、参加チームを募集中。今年はどんな素敵な家族に会えるか楽しみだ。






(上毛新聞 2012年6月12日掲載)