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視点 オピニオン21
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NPO法人グリーンハート理事長  横堀 充則 (伊勢崎市太田町)



【略歴】伊勢崎市生まれ。明和県央高卒。飲食店経営。2009年、市内の若者の活動拠点としてNPO法人を設立。波志江沼イルミネーション実行委員。


今の時代を考える



◎和を心のよりどころに



 とある懇親会の席でこんなことを言われたことがあります。私の渡した名刺を見て、ある企業の社長さんが「NPO? それもうかるの?」。その問いかけに私は時代の流れを感じました。

 戦後から高度経済成長を経て世界第2位の経済大国まで上り詰めた日本。リーマンショック後、低迷する日本経済。「日本は不況だ」とさまざまな場面で耳にしますが、皆さんは今の日本をどう思われますか。戦後の日本人には復興という大きな目標があり、生きることへの活気があったと聞きます。昔と比べれば現在は、はるかに生活水準は上がりました。しかし、その経済成長の過程で「人の心」は置き去りにされてしまったような気がします。

 私はこの時代に不自由を一切感じませんし、物資的にも非常に恵まれていると思っています。目標を持つことで周囲を巻き込み、夢をかなえ挑戦する素晴らしさを日々感じています。聞いた話で恐縮ですが、戦後初期では衣食住も困ったそうです。現在はどうでしょうか。ぜいたくさえしなければ、そうそう困ることはないはずです。戦後の目標は今や「あたりまえ」になってしまっているのです。経済大国に生まれ変わったことが、逆に日本人の精神に影を落としているのだと思います。

 「数万円稼ぐ努力をするなら、数万円なくても満足できる心を学びましょう」。私が従業員と話をするときの決まり文句になっています。人生は良い時ばかりではありません。むしろ我慢をしなくてはいけない時期の方が多いと思います。心を養えば、その手段や目的も有意義なものになるでしょう。心の貧乏人にはならぬことです。お金を稼ぐよりも、その手段と使い道の方がよほど大切な気がします。戦後復興という目標は、先人たちのおかげで達成しました。私は今の時代は目標の転換期にあたると思います。日本各地の小さなコミュニティーのリーダーたちが目標を掲げ、進むべき道を照らしてあげることです。金銭的な目標だけではいけません。時代が違うのです。

 私はボランティアを通して、目的の遂行よりも、仲間と取り組む素晴らしさやそこでつながる人脈など、人との和を大切にしています。私たち世代は心のよりどころを探しているのかもしれません。経済大国日本をこれからの世代が本当に望んでいるようには私には思えませんし、むしろ便利になりすぎる世の中では、協調性も生まれにくいのです。日本全体が求めることと、私たち世代の小さなコミュニティーが求めていることに、大きな差異を感じています。最後になりますが「NPO? それもうかるの?」の問いに私は「はい、人の恩をいただけますよ! 良かったら一緒にボランティアしましょう」と笑顔で答えました。





(上毛新聞 2012年6月14日掲載)