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前橋朝倉小環境教育講師  鈴木 正知 (前橋市朝倉町)



【略歴】東京都町田市出身。国内外の水族館や動物園で飼育員として勤務。現在、前橋朝倉小でビオトープを使った環境教育に携わる。前橋地域づくり連絡会委員長。


地域(環境)づくり



◎想いを共有して参加



 想おもいが形になる喜び、想いが伝わる信頼、想いが広がる期待。そこには同じ時を生きる仲間がいます。一人一人の考えは違いますが同じ想いや理念の中から出た意見には敬意を払い、共有できる中身を探し理解を深めます。理念を共有する人たちの集まりでも同じ考え方になることはあり得ないし、あってはいけないとも思います。

 違う意見の中から目指しているものを探し出すことができればそれでいいのではないでしょうか。すべての方の意見をまずよく聞く。その言葉の中から真意を探して共有できる部分を見つける努力を忘れてはいけないと、いつも自分に言い聞かせています。「地域(環境)づくり」を育てているうちに見つけた答えの中の一つです。

 私はこれまで生き物にかかわる時期が長かったのです。言葉の通じない生き物たちから教わったことはたくさんあります。今になってとても役立っていることに、今さらながら感謝しています。

 その生き物が今、何を望んでいるのかを一瞬の観察力で察知すること。個体や種類によってそれぞれ個性も違います。じっと見られていても気にしないものもいれば、見られているだけでストレスを感じて餌を食べなくなったり、体調不良になったりもします。また、いつも餌がないといじけてしまうものもいれば、餌があることで拒食になってしまうものなどさまざまです。

 ケージの前を通るたびにチラッと見て目が合った瞬間に、今何を望んでいるのかを察知することが重要です。不思議なものでだんだん分かってくるんですよ。その瞬間を見逃さずに、してほしいことをしてあげる。葛西臨海水族園で悠々と泳ぐクロマグロやアカシュモクザメの飼育では随分苦労しました。

 「地域(環境)づくり」にも同じようなことが言えると思います。ともに苦労を乗り越えた仲間との信頼関係は、きっと先々自分を導いてくれると信じていますし、自分が経験してきたように、すべての子どもたちに「はじめて見るもの、未知なものに目を見張る感性」を養ってもらいたい。そのきっかけとなる身近な生き物がすむ環境を今はあえて用意しないといけない現状はさておき、用意さえしてあげれば地域との連携のもと、すべての子どもたちが本来持っている好奇心と適用力を最大限に使って自分自身の感性を磨いてくれるに違いありません。

 それには地域の方々がその意味や理念を理解し共有して意識的に参加すること。地域の子どもたちが今に合った活動ができる「地域(環境)づくり」が重要だと考えます。






(上毛新聞 2012年6月17日掲載)