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視点 オピニオン21
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ゆいの家主宰  高石 知枝 (高崎市菊地町)



【略歴】愛知県生まれ。愛知教育大卒。元小・中学校教員。2001年に退職。「ゆいの家」を拠点に、料理教室などの「食」にまつわる啓発活動を行っている。


自然〈じねん〉料理



◎素材の持ち味を生かす



 これまで、竹下和男先生が勧めている「弁当の日」のことをずっと書いてきました。竹下先生の講演会も何回か主催しましたが、「藤岡の小中学校で6月と7月に竹下先生を招くことになりました」という電話をもらい、思わずやったあと思いました。自分の力だけではなかなか広がりませんが、コツコツとまいておいた種からだんだんと芽が出てくるものだと思いました。7月9日には高崎の中学校が隣にある小学校も巻き込んで竹下先生の講演会をすることが決まりました。どんどん竹下先生を呼んで「弁当の日」が広がっていけばいいなと思います。

 「弁当の日」の応援は私自身がやってきた活動の第一歩です。今の「食」がいかにいい加減で、身体だけでなく心までがおかしくなったと気づいているのは私だけではないと思います。しかし、料理することを面倒に思っている世代の親に「食事をちゃんとしてくださいよ」と言ってもなかなか変わるものではありません。「弁当の日」を通して、子どもたち自身に自分で作ることの楽しさに気づいてもらう方が早いのです。

 食の大切さの例として、秋月辰一郎という医師の書かれた『死の同心円』にこんな話があります。長崎に原爆が投下された時、爆心地1・4キロにある病院で、秋月医師が自然塩をしっかりつけた玄米と天然醸造の味噌を食べ、砂糖など甘いものは避けるように指示したことで、被ばくしたにもかかわらず病院の約70人全員が生き延びたということです。

 今の放射能汚染だけでなく、それ以前から農薬や化学肥料、除草剤、遺伝子組み換え、食品添加物などの問題があり、さらに白砂糖や動物たんぱくの取り過ぎがそれに拍車をかけて、どんどん身体や心がおかしくさせられています。戦後、効率や便利さを求めたさまざまな技術の進歩がかえってあだになっているのです。そんな時代を子どもたちは生きていかなければなりません。これまでのように何でもおなかいっぱい食べればいい時代ではなく、命のない物をいくら食べても命はつくれず、かえって病気を作るだけです。

 オピニオンの1回目に「食を中心にやろうと思いますが、まだ試行錯誤状態です」と書かせていただきました。その後少しずつ料理教室を積み重ねる中、手ごたえを感じるようになりました。私が伝えたい料理を勝手に「自然(じねん)料理」と呼ぶようになりました。自然料理は命のつながりに感謝して、あまり余分なことをせず、素材そのものの持ち味を限りなく生かす、自分の五感をフルに活用したあるがままの料理。ですから料理教室では作り方や考え方など決めつけず、こだわらず、時には手抜きをしながら自分の身体や心にとって喜びになるものを伝えたいと思います。






(上毛新聞 2012年6月19日掲載)