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NPO法人「三松会」理事長  塚田 一晃 (館林市高根町)



【略歴】東京都出身。曹洞宗大本山總持寺などで修行後、源清寺副住職に着任。1995年に三松会設立。両毛地域初の阿波踊り団体「上州みまつ連」代表も務める。


フードバンク



◎必要な人に無償で提供



 「フードバンク」と聞いて「それって何?」と思われる人も多いのではないでしょうか。欧米では広く浸透していて各地に拠点がありますが、日本ではまだまだ浸透していない活動です。

 フードバンクとは、食品関連企業などから、製造・流通過程などで出る余剰食品や規格外商品、販売店舗等で売れ残った賞味期限・消費期限のある商品など、安全上は問題がなくても廃棄される食品の寄付を受け、無償で必要な人や団体に提供するボランティア活動のことです。1960年代にアメリカで始まり、日本でも2000年ごろから行われています。

 三松会も活動させていただいている中で、食品を必要としている方を目の当たりにしてきました。フードバンクのことを知った時、ぜひ自分もその活動に取り組みたいと東京のセカンドハーベストジャパンの指導を受け、09年に準備を始め、翌年から本格的に活動を開始しました。実際に始めてみて、これは容易ではない奥の深い活動だとよく分かりました。

 廃棄処分する食品だから簡単に頂けると世間では思われがちですが、企業にとっては大事な商品であり、提供する側もまずは、どのような団体・施設に配布しているか提供される側をリサーチしてきます。適正に配布などが行われていることが確認されると、次はお互いに事務所訪問をして協議を重ね、初めて同意書を締結します。大事なことは、提供する側とされる側で信頼関係が構築されない限りフードバンク活動はできないのです。提供される側も、する側に対しさまざまな面で配慮しなくてはなりません。賞味期限はもちろんですが、一番大変なのはごみの問題です。

 ホームレス支援の場合は、パッケージものの食品を提供するとごみを路上等に捨てられてしまうので、どうしても炊き出しなど、ごみが出ない支援に限定されてしまいます。在宅の生活困窮者に対しては転売の禁止などフードバンク活動の意味を説明し理解を求めなくてはいけません。

 また、人材不足や運営費に関しても問題です。食品は無償で寄付を受け、無償で団体や施設に配布しますので完全なるボランティアであり、配送する車両運搬費や燃料代はすべて活動団体の自費です。多くの団体がこの問題に直面しており、さまざまな形態で苦難を乗り越えて活動しています。

 最近は新聞等で餓死の記事を見るたびに、どうしたらこのような人に食品を届けられるか悩んでしまいます。三松会もおかげさまで多くの企業と信頼関係が構築でき、多くの食品の寄付をいただいていますが、三松会から生活困窮者までの支援方法など、まだまだ学ばなくてはいけないところがたくさんあり、日々勉強の連続です。






(上毛新聞 2012年6月23日掲載)