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視点 オピニオン21
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紙芝居屋めるへんしあたあ主宰  信沢 淳一 (安中市松井田町)



【略歴】大東文化大を卒業後、郵便局に34年間勤務。2009年に紙芝居屋めるへんしあたあを設立、紙芝居の出前公演を有料化した。演じ方や制作の指導もしている。


子どもたちの前で読む



◎言葉磨かれ美しい声に



 きょうは朝8時15分から小学校で紙芝居です。舞台を積んだカートを引っ張り教室の前を通ると、子どもたちが何人も顔を出して「きょうは何年生で紙芝居?」。「君たちのクラスだよ」と言うと、一斉に「やった」と歓声が上がります。楽しみにして待っている子がいると思うとやりがいがあります。

 こんな歓声が上がるのも低学年だからです。高学年になると淡々としています。ギャグ紙芝居で、笑いが起こるはずのところも、笑いを顔の裏側に押し込んで、シラーとしていることがあります。こんなことがあるので、読み聞かせをしているお母さん方は「低学年がかわいくていいよね」と言うのでしょうか。

 低学年では、読み聞かせや紙芝居を無邪気に楽しんでいます。高学年になると、単に見聞きしているのではありません。子どもたちは1年間に10人の方の話を聞き、4年間で40回聞いているのですから、聞き上手になります。ですから、私もボランティアだからといって手は抜けません。普段演じている紙芝居でも、クラスを想定し、再度下読みし、枚数確認などをして早めに出かけます。

 『読み聞かせの基本』などの初めには「導入には、ただ淡々と子どもの前で読めば良い」と書かれていますが、その次に注意しなければならないことがあります、と必ず書いてあります。どんなことでもやってみると奥が深いものです。

 絵本は「読むもの」、紙芝居は「演ずるもの」。ここが大きく違います。絵本と紙芝居に共通するものもあります。それは「間」です。クラス全体の空気を読んで、聞き手の立場に立って読むことです。また、子どもたちと目を合わせ、あなただけにというメッセージをアイコンタクトしてください。子どもたちに「それ知ってる」「こんな内容だあ」と言われても、うろたえたり「やめます」と言ったりしないでください。子どもたちは大人と違い、好きな本や紙芝居は何度でも読んだり演じてほしいものです。 読み聞かせは多くの学校で行われています。少子高齢化が進み、子どもが少なくなれば、当然読み手の親も少なくなり、誰でも読み聞かせに参加できない理由が両手で数え切れないほどあります。年に1回でも良いですから、マイ絵本や図書館にある絵本、紙芝居を借りて、子どもたちの前で声を出して読んであげてください。子どもたちに自慢される父親や母親になってください。

 声を出して読むことで、新しいことも発見できます。自分の声です。ゆっくり読むことで、言葉が磨かれ、美しい声になります。朝8時15分から私と一緒に始めてみませんか。






(上毛新聞 2012年6月26日掲載)