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大間々町商工会青年部長  吉沢 正樹 (みどり市大間々町)



【略歴】桐生工業高、日本大生産工学部卒。大手建設会社を経て、父親が経営する測量器メンテナンス会社に入社、現社長。2011年4月から大間々町商工会青年部長。


祭りとは



◎「祈り」込めたイベント



 「祭り」という言葉を聞いて皆さんは何を想像するだろうか。おそらく、ほとんどの方が地元のお祭りの神みこし輿、太鼓や笛の音がにぎやかな八木節、露店などを思い浮かべるに違いない。ほかにも青森ねぶた祭り、6年に一度の諏訪大社・御柱祭など、全国各地でさまざまな祭りが行われている。日本人は老若男女みな祭り好きではないだろうか。

 私の地元には383年の歴史を持つ「大間々祇園まつり」がある。毎年8月の1~3日に盛大に行われる。とりわけ神輿渡御の清めとして、馬と若者たちが本町通りを勇壮に走り抜ける「神馬」はかなり見応えがある。 過去に祭りとは何かを私に教えてくれた先生がいた。

 商工会青年部に所属していると研修旅行として、全国津々浦々を訪問できることが何よりもありがたい。旅先でさまざまなことを教えてもらえて見聞も広まる。中でも、私の人生を変えたというと大げさだが、深く印象に残っている訪問先がある。それは今から12年前に行った滋賀県の彦根・長浜地区である。長浜市のガラスの街「黒壁スクエア」は成功した町おこしで有名だ。そこで代表を務めている笹原司朗氏の講話は分かりやすく、心に響いた。

 かつて長浜市内の商店街も俗に言うシャッター通りだったそうだ。そこで、町おこしを考えた笹原氏は、まず商店街の現状がどれくらい落ち込んでいるのか交通量調査を始めた。1時間計測して通過したのは「人間1人と犬1匹」という結果だった。

 これは何とかしないとまずいと考えた笹原氏は、世界各国を旅してどの観光地でも共通してにぎわっていたのがガラス工芸のお店だと解明した。これで町おこしをしようとガラスの勉強を一から始めたのがきっかけだったそうだ。今では28号館まで増えて年間来訪者は200万人を超える観光地となった。

 笹原氏はわれわれに問いかけた。「皆さん、イベントと祭りの違いが分かりますか」。青年部員は誰一人答えられなかった。そこでこう説明してくれた。「祭りもイベントも『祈り』があるかないかで全く違うものになる。祈りがあるイベントは祭り。祈りがない祭りはただのイベント」。目からうろこが落ちた。笹原氏の話は今でも明確に覚えている。

 一昨年から青森県の大間町商工会青年部と交流している。彼らの地元では「大間のマグロ祭り」が毎年開催されている。来場者が年々うなぎのぼりに増えているこの祭りは全国的にも知名度が高くなってきている。大間町ではこのほかにも桜祭り、大漁祈願祭、稲荷神社祭、ブルーマリンフェスティバルと数多くの祭りが行われている。どの祭りも全て『祈り』が込められている。皆さんも本当の「祭り」に参加してみませんか。





(上毛新聞 2012年6月28日掲載)