,

視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
見城農園  見城 玲子 (渋川市渋川)



【略歴】伊勢崎女子高、文化服装学院卒。1976年に結婚後、渋川市へ。主婦の傍ら25年ほど前から夫の彰さんと趣味で果樹栽培を始め、規模を拡大してきた。


突然変異の発見



◎果樹栽培楽しみの一つ



 日本の果物は世界一甘くて大きいと言われています。では糖度がどのくらいあったら甘い果物と感じるのでしょうか。糖度13度が一つの目安となります。肉質や酸との関係で多少甘さの感じ方は異なりますが、糖度が13度あるとほとんどの果物は大変うまいと感じられます。しかし、12度ですと不満が残ります。大相撲に例えるなら、糖度が13度あると9勝6敗か10勝5敗で完全に勝ち越し、糖度12度ですと7勝8敗か6勝9敗で負け越しといった感じです。桃やスイカの時季ですが、都内等の高級果物専門店に並ぶ桃は、ほとんどが光センサーで検査した13度以上の桃です。スイカも13度あると本当に甘くてうまいです。まだ少ないと思いますが糖度表示をして売られている果物を見つけたら「糖度13度」以上か以下か、ご留意してみてください。

 「日本の果物は外国の果物に比べて大きく、倍くらいはある」という声を良く聞きます。本当に倍もあるのでしょうか。見た目だけの判断で錯覚ではないでしょうか。ここに200グラムと400グラムの梨があったとします。400グラムの梨は200グラムの梨の何倍くらい大きく見えるでしょうか。個人差もありますが、ほとんどが「重さが倍なら見た目も倍」という回答になると思います。しかし、見た目の大きさは重さの倍率の2乗で、2×2の4倍くらいに見えます。200グラムの梨と600グラムの梨では、倍率3倍の2乗で3×3の9倍くらいに見えます。トマトやジャガイモ等で実験してみて、小玉を買うか大玉を買うか迷った時には参考にしてみてください。

 毎年、新品種の桃やリンゴが登場しています。新品種は通常、他品種の交配により育成されますが、交配の他に突然変異での育成があります。一本の果樹の中で一枝だけ違った品質の果物ができることがあります。当園の主力商品「西洋梨コミス」は果実の品種に関しては完璧であり、何の欠点もありません。「西洋梨コミス」を交配した新品種育成は全く考えられません。ただ「西洋梨コミス」は充実した花芽が少なく、他の西洋梨の1割程度しか収穫量がありません。10年ほど前から充実した花芽の付きやすい突然変異の枝を探しています。

 桃やリンゴには突然変異がありましたが、ほとんどが大きく熟期が早いものの、渋味があり味が薄い等のマイナスの突然変異で、プラスの突然変異は見つかりませんでした。4年前に酸味が強く紅色素の多い桃(『さちね』と命名)を発見しました。コンポートやジャムにすると濃厚な味できれいなローズピンクに仕上がります。昨年は7月下旬に収穫できて、糖度16度から18度という、7月の桃としては最高糖度の桃(『かなひめ』と命名)の突然変異を発見し固定しているかどうか試作中です。「突然変異の発見」も果樹栽培の楽しみの一つです。





(上毛新聞 2012年6月29日掲載)