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視点 オピニオン21
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和紙ちぎり絵作家  森住 ゆき (埼玉県熊谷市)



【略歴】桐生市新里町出身。1984年偕成社「絵本とおはなし新人賞」、85年群馬県文学賞児童文学部門受賞。著書に『アメイジング・グレイス』『ぶどうの気持ち』。


福祉ボランティア



◎関われる分野で支援を



 前回(5月6日付)に続き、私が通っているキリスト教会が生み出した障害者就労支援施設「行田のぞみ園」との関わりについて書かせていただきたく思います。

 自分なりに、できる角度から園のサポートを楽しもう―というわけで、私は園にすでにあったPR用チラシのリニューアルに関わらせていただきました。園は近隣の公共施設やスーパーの店頭で定期的に出張販売をしています。そこでのチラシ配りは、園の方々が社会に出て一般市民の方々との関わりを体験できる大事な仕事です。

 私はクッキーやケーキを種類別に手描きイラストを添えて紹介することにしました。何しろ園のお菓子が本格的な味と作りなので、ワクワクしながら何種類もじゃんじゃん作りました。そして販売活動に出かけてゆく時に持参し、障害者の方々と一緒に道ゆく人々に片っ端から配りました。チラシを見てお菓子を買う人が来る。その広告効果を目で見ることができ、園の方々もやりがいを感じてくださるようでした。

 また、お菓子の製造現場の様子や、新商品の情報、折々の園の方々のエピソードなどを紹介するため、自宅のパソコンで園の応援ブログを4年前に開設しました。いずれ園のホームページができることを願いつつ、今もほそぼそとですが、何とか更新を続けています。

 3月15日付の当欄で、私財の大半を投じて福祉財団を設立したヤマト運輸元会長の小倉昌男氏(故人)の、「福祉作業所の名に甘え、市場経済の感覚から遊離したモノ作りをしていては、障害者に然しかるべき報酬を払うことはできない」という言葉を引用させていただきました。個人的な経験から言えば、そうするからには福祉施設にも明確なセールス・プロモーションの意識と戦略が必要だと思います。しかし、現在の福祉を取り巻く厳しい環境の中、どこの施設もぎりぎりの職員数で運営され、とても広報活動まで手がまわらないのが現実です。

 福祉ボランティアというと、「地元の社会福祉協議会に登録し、施設に出向いて現場のお手伝い」というイメージが一般的ですが、それでカバーできない分野にもボランティアの余地はある気がします。私が関わったチラシ作りやブログ更新のお手伝い等は、施設側との丁寧な打ち合わせは必要ですが、その種のことが嫌いでなければ、在宅で誰でもできることでした。

 例えば、広告デザインを学ぶ学生さんや豊かなパソコンスキルをお持ちのビジネスパーソンのお力を拝借できたら、小さな福祉作業所はどんなに力強いことでしょう。より多様化している福祉作業所のニーズと、市民のボランティア意識をマッチングする公的な仕組みの一層の充実を望みます。







(上毛新聞 2012年7月1日掲載)