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視点 オピニオン21
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繊維製品企画会社グラムス社長  松平 博政 (桐生市境野町)


【略歴】流通経済大卒。繊維メーカー勤務を経て2005年に独立。桐生市イクメンプロジェクト推進チームリーダー。NPO・ファザーリング・ジャパン会員。


父親の役割



◎役立つ家庭でのスキル



 子育て支援と聞いて、「自分には関係ない」と思う人もいるかもしれない。確かに言葉だけ聞くと、子育て世帯だけに関わる問題のようにとらえられがちだ。しかし、これは単に社会保障だけの問題ではなく、教育や政治、雇用や地域経済などにまで及ぶ問題であり、多くの人に関わる問題なのだ。将来をどうデザインし、マネジメントするかの鍵は、現在多くの組織の中心を担っている父親たちが握っているといっても過言ではない。

 現役子育て世代は、同時に親の介護についても考えていかなければならない。今後、企業の現場では、介護を理由に仕事を続けられなくなる事例がたくさん出てくるだろう。家庭のことを妻任せにしていたら、いざ自分がその立場になったときに、手も足も出なくなる。そうならないためにも事前の準備が必要だ。

 組織としては、働き方の見直しや人材の多様化を受け入れる必要がある。料理や洗濯などのスキルを楽しく身につけたり、育児休暇をとってママをサポートしたりする男性が増えるのは必然である。企業にとっては、このように家庭でのスキルを身につけた人材は、これからますます重要になっていく。

 複数の“事業”を同時に行う家事においては、リーダーシップやタイムマネジメントが必要であるし、限られたリソースで最大限の成果を引き出すには、情報の共有を積極的に行い、ママと協力して子どもをコーチングし、優秀な“人材”を育てていくことが必須である。

 そうしたスキルを持った父親たちが担う企業活動は、地域活性化にとっても重要なものとなる。地域にコミットすることで、仕事にも役立つ出会いや自身の成長につながることも数多い。

 自治体にも、地域に根付いた企業を育てるエコノミックガーデニングの発想が必要であろう。これらのステークホルダーが、子どもたちがこれから何年間か暮らす地域を魅力的で活力あるものになるようにグランドデザインを描く。桐生市ではまさにこういった発想で地域づくりを行おうとしている。

 地域の大人たちが地域に誇りを持てないとすれば、大人の鏡である子どもたちが持てるわけがない。大人たちが率先して地域の魅力を上げることを実行し続ければ、子どもたちが大人になったときに、地域に定着するかもしれない。少子化を克服して、にぎやかな地域になるかもしれない。これまでのやり方で地域が活性化していないなら、検証してもう一度やり方を変えれば良い。子どもも大人も、父親も母親も、自治体も企業も、いつだって変わることができる。







(上毛新聞 2012年7月7日掲載)