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視点 オピニオン21
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国立赤城青少年交流の家所長  桜井 義維英 (前橋市元総社町)


【略歴】川崎市出身。日体大卒。英国で冒険教育を学ぶ。1983年にNPO法人・国際自然大学校(本部・東京都)を設立。2011年4月から民間出身者として現職。


子どもの思い出づくり



◎人任せにせず関わろう



 ずっと子どもの体験の話をしてきました。子どもがいろいろな体験をして育ったのが、大人になった皆さんでしょう。そして、その体験は皆さんの中で、いろいろな判断をするときの元となる思い出となっていると思います。同時に、大人が思い出を持っていると、子どもが同じような体験をしてきたときに共感できます。「そうか! お父さんもね…」と話せますよね。

 そして、ご自分の思い出に重ねることで、子どもの危険度を察知できたり、推し量れるでしょう。そして、それを奨励したり、注意するようにもできるでしょう。当然のことながら、子どもにとってどれだけ大切なことかを判断できるでしょう。

 自分の子どもは、自分の子どもとして育てたいものです。テレビにでている評論家や、子育て論は、あなたの子どもの成長に責任をとってはくれません。それに、すべてに万能な教育論などないのです。マスコミや教育論に惑わされてはいけません。一人一人の子どもの成長を一生懸命に考えて共に歩むからこそ、子どもは成長し、共に歩んでくれた人たちに感謝してくれるのです。

 ただ、今不安なことは…。

 今の大人がすでに思い出を持っていないのかもしれないということです。なぜそう思うかというと、思い出をつくるための子どもたちの体験を、他の人に任せ切っているような気がしてならないからです。

 体験のない大人にとっては、それも仕方のないことでしょう。しかし、任せるからには、任せてもいいと思える人に任せてください。

 ただし、学校の先生はその役割を引き受ける立場ではありません。もちろん学校での思い出は学校でつくれますが、そのほかの思い出まで任せていませんか?

 思い出はつくれ、勉強は教えろ、躾(しつけ)もしろというのは無理でしょう。家庭、社会、学校で分担していたものを全て学校に押し付けては、先生がオーバーフローするのも当たり前です。では、どうしたらよいのでしょうか。

 そのようなことをしてくれる地域の人たちと一緒に、子どもの思い出をつくることを考えていきましょう。そのときに気をつけなくてはいけないのは、一緒にしていくということです。お願いして、できなかったら、どうしてできなかったのだ、などと他人を責めるのではなく、共に思い出をつくる努力をしなくてはいけないのです。

 今、そのようなことをしてくれる人たちが少しずつ増えてきています。NPOの団体が多いようです。私のいる国立赤城青少年交流の家などは、みなさんと、そんな団体をつなぐのも大切な役割だと感じています。






(上毛新聞 2012年7月15日掲載)