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視点 オピニオン21
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「親子でハーモニー」代表  市川 イヅ実 (伊勢崎市上諏訪町)


【略歴】伊勢崎市生まれ。関東短大初等教育科卒。伊勢崎市内の慈教幼稚園教諭を経て菊池保険事務所勤務。2008年から「親子でハーモニー」代表。


勉強と教科



◎それぞれに大切な意味



 夏休み前、漢字・計算コンテストが小学校で行われたことでしょう。私が子どものころには、このようなコンテストはなかったように記憶しています。ですので今の小学校の状況に少し戸惑いを感じた時がありました。 マイペースな長男は、入学するまで遊ぶことが大好きで、勉強に興味を持ちませんでした。「脱ゆとり教育になった授業についていけるかな」と、母親として心配でした。でも、好奇心旺盛な性格と先生のご指導のおかげで、長男は頑張って授業についていったようです。なので「帰宅後は自分の好きなことをしてリラックスしたいのに、なぜ勉強(宿題)をしなければいけないのか」と悪態をつくこともありました。自分で納得しないと、悪態がヒートアップしてしまうので、説明が必要になります。いろいろ考えた揚げ句「勉強はあなたの可能性を伸ばし、将来の選択肢を広げるものです」と伝えました。長男は将来の夢を語ることがあります。勉強の積み重ねで、字が読めるようになったことで、世界が広がりました。長男は本を読む楽しさを実感していたようです。だから私の説明にも納得がいったようです。

 その姿を見て私は、勉強についての視点が変わった自身の体験を思い出しました。私が中学生のころ、美容師さんと勉強の話になった時、美容師さんは「社会に出れば読み書きと計算ができれば何とか生活できるんだよね。だから数学は必要ないと思うかもしれない。でも必ず答えが出る数学は、論理的に物事を考える力を養うために必要なんだ」と言うのです。それを聞いた時に、毛嫌いしていた数学と違った視点から向き合うきっかけとなり、嫌悪感を払拭(ふっしょく)することができました。

 そんな体験をした私が社会人となって、中学生と話をする機会がありました。内容の一部で勉強について触れ、美容師さんから聞いた話にプラスして、体験から気付いた私なりの教科の視点を伝えました。国語は母国語として大切で、老若男女に伝えられる言葉や表現を学習できる・数学は論理的に物事を考える思考力を養える・社会は歴史を学ぶことで未来に生かせると思うなど、それぞれの教科には意味があるという内容でした。あの時、人生の先輩として中学生に話したことを、今度は母親として自分の子どもに伝える時期が来たように感じました。

 これからも長男が勉強について悪態をついた時、私は「勉強はあなたの可能性を伸ばし将来の選択肢を広げ、教科はそれぞれ大切な意味があります」という話を根気よく伝え続けていくでしょう。そしてこの文章が、誰かの苦手教科の意識を変えるきっかけとなり、勉強のやる気スイッチを押せたら幸いです。






(上毛新聞 2012年7月19日掲載)