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視点 オピニオン21
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四万温泉協会長  柏原 益夫 (中之条町四万)


【略歴】中之条町生まれ。群馬大工学部卒。柏屋社長。2010年から四万温泉協会長。四万温泉や宿を日本のみならず世界の人々に知ってもらう方策を日々模索中。


イベントの効果



◎知名度高める大きな力



 「『世のちり洗う四万温泉』で工芸作家が創作風景を見せ、作品を展示したら面白そうだね」。7月16日まで17日間にわたり四万温泉で開催された中之条町主催の「温泉郷クラフトシアター」は、そんな観点で行ったイベントでした。

 作家たちのリズミカルな鉄をたたく音、石を彫る音、ノミの音が響き、温泉街全体の活気が増しました。お客さま、地元の人、作家の皆さんがそれぞれに楽しみ、満足し、価値あるイベントとして、今年の「ググっとぐんま観光キャンペーン」の開幕にふさわしい大成功を収めました。ここ数年、中之条ビエンナーレなどを継続的に開催していたので「アートに親しめる町や温泉地」というイメージが下地にできていたのも成功の要因のひとつだと思います。

 さて、「どのようにして四万温泉をもっとたくさんのお客さまに知っていただくか」という視点で、このイベントがどんな貢献をしたのか考えてみました。

 真っ先に浮かぶのは、このイベントに行ってみたい、という直接的な理由で四万温泉を訪れるお客さまが増えたことです。期間中は、四万温泉では普段はあまり多くない日帰りのお客さまが大幅に増えたようです。

 次に、パブリシティ(広報)効果です。イベントの様子が県内の新聞やラジオなどを中心に何度も取り上げられたので、そのニュースや記事で「四万温泉」や「中之条」が何度も露出しています。

 そして、口コミ効果です。イベント期間中に実際に来ていただいた方が、周りの人に「四万温泉っていいよ!」とか「温泉郷クラフトシアターって一見の価値ありだよ!」とか伝える効果で、メディアの情報よりも親しい方からの情報は身近で信頼されやすい傾向があるので良い効果を発揮します。実際、クラフトシアターが始まってから日増しにお客さまが増えていった印象です。

 最後に、関係者による告知効果です。四万温泉に住む私たち、作家の皆さん、ともに楽しみながらのイベントでしたので、関係者からのポジティブな情報発信がとても多かったように思います。とくに、最近流行のfacebookなどのSNSでの発信が目立ちました。

 このように、質の高いイベントを継続的に実施することも地域を知っていただくための大きな力なのですね。さらに、ある研究機関によれば温泉地域のお客さま満足度を高める要素のひとつに「目新しさ」が大きく影響しているとの調査結果も出ています。四万温泉では最近少し消極的になっていたイベントをもう少し積極的に行うべきなのかもしれないと、このごろ考えるようになってきました。





(上毛新聞 2012年7月30日掲載)