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シンクトゥギャザー代表取締役  宗村 正弘 (太田市新田早川町)


【略歴】足利市生まれ。富士重工業で車体設計を三十数年担当。退社後、2007年、工業製品開発を支援するシンクトゥギャザー設立。群馬大次世代EV研究会メンバー。


電動8輪バス



◎車内空間広く平らな床



 7月14日に桐生市で電動8輪コミュニティーバスのお披露目がありました。重要伝統的建築物群保存地区に選定された町並みの観光案内に、これから一役買うことになります。今回はこの電動コミュニティーバス開発の裏話と技術的な側面から電気自動車の可能性について話したいと思います。 この電動コミュニティーバスの最大の特徴は8つの車輪があり、すべてにモーターが付いていて8輪駆動になっていることでしょう。「なぜ8輪車ですか?」という質問をよく受けます。種を明かせば、1人乗りのマイクロEV用インホイール駆動ユニットを流用しているからです。つまりモーター出力が小さいので大きな車体を動かすには8個モーターが必要ということです。

 それならば大きなモーターで普通の4輪車にすればもっと簡単に作れるのではという方もいらっしゃいます。しかし、それではすべてを新規開発しなければならず、その時間と費用は膨大なものになってしまいます。また、駆動輪をたくさん持たせることができる電気自動車ならではの可能性を試してみたかったのも理由のひとつです。そこで既に開発済みであったマイクロEV用インホイール駆動ユニットおよびサスペンションを多数個流用するという手段をとったわけです。

 インホイールモーター方式の利点は大きな動力源(大きなモーター、エンジン)や変速機がないので、車体の大部分を人およびモノを載せるための空間として利用できることです。しかもフルフラットな床面を作ることができますので、アイデア次第でいろいろな用途の自動車を考えることができます。

 また、今回の電動8輪コミュニティーバスはデザインが大変ユニークな点も大きな特徴になっています。等間隔に並んだ4個のタイヤとその前後に配置された乗降口がポイントですが、こういう大胆なデザインもインホイールモーター方式が成せる技と言えるでしょう。ユニークなデザインは人の視線を集める効果がありますので、集客性やメッセージの伝達性には高い能力があります。桐生市だけではなく、全国各地の観光振興やイベントを盛り上げようとする場面では大いに活躍するでしょうし、商品のデリバリーや移動販売車、車内で食事ができる移動レストラン車なども面白いアイデアですね。また、選挙の街宣車にも効果絶大で、環境保全・クリーンエネルギーイメージも高まって当選間違いなしでしょう。

 これからも今まで見たこともない電気自動車が現れると思います。どうぞ楽しみにしていてください。






(上毛新聞 2012年8月1日掲載)